『ブルー・レクイエム』40点
かなりオールドスタイルなフランス製フィルム・ノワール(暗いムードの犯罪映画)。一風変わっているのは、お定まりの犯人vs.追跡者の構図を描くのではなく、目的不明の主人公の日常を追うことで、フランスの労働者事情が非常に細かく味わえるという点。アメリカ人に対する優越感情やドラッグの蔓延などは映画で見慣れているが、組合活動なんぞをコツコツやってる人間がいたりするのを見ると、なんとなく親近感を感じる。映画としては、淡々と進む物語展開、ラストの冷酷で静かなアクションなど、いかにもフランス映画的。この手のジャンルのファンなら普通に見られるが、そうでないとちと厳しいか。
『female フィーメイル』40点
「女性とエロス」をテーマにした5監督5短編集。裸はあまり出ず、女性向けのさわやか目な映画になっている。しかし私の目から見ると、この作品は「見せない事によるエロさ」というより、単に中途半端で思い切りが悪いだけだ。たとえば熟した桃を食べるシーンなど、わざとエロくしようというあざとさを感じるし、3人の女が連れションする場面などもわざとらしい。大体そういうシーンをウリにするなら女優にパンツくらい下ろさせてくれ。どこに下着をはいたまま排尿する人間がいるのだ(あ、『花と蛇2』の杉本さんはやってたわ)。ちなみに、さすがと唸らせるのが塚本晋也監督。時代も場所もわからない奇妙なセットの中での非日常的なエロス、石田えりの存在感もあって、これは見事だった。
『ワイルド・タウン 英雄伝説』50点
『ウォーキング・トール』(73年)をザ・ロック主演でリメイク。CGナシの昔ながらのローテクアクション(武器はなんと角材一本!)だが、プロレスラーでもあるザ・ロックは動けるマッチョなので見ごたえばっちり。彼はやさしい目をしているのでこういう役が似合う。80数分の映画なのでキャラを描き切れていないが、余計なことをしない一本道のストーリーなのでサラっと見られる。オリジナルは、もとレスラーが腐敗しきった故郷に戻り、保安官として悪を一層という実話の映画化で、確かにザ・ロックにはピッタリな話かも。このリメイク版は後味すっきり、勧善懲悪。さわやかな家族愛を描いた暖かい映画。
『KARAOKE 人生紙一重』30点
カラオケ発明物語。押尾学大先生主演の泥臭いオジサン映画。いきなり野球の星野仙一監督のナレーションで映画を始めるんだから参る。ま、そういう、センスのかけらもない映画だと思ってみれば、押尾くんの演技が良いので案外楽しめる。彼からは、風格というか、妙な自信を感じさせるオーラが出ている。
物語もなかなかいけるのだが、彼が老いた後の後日談みたいのまでくっつけてるのがいけない。あんなものは、テロップで出せばすむことだ。タイム誌と特許のネタも、映画最大のウリなんだからあんな出し方じゃもったいない。おまけに押尾氏のフケメイクがアホすぎて、この終盤一気に我慢の限界を超えてしまう。作り手ばかり盛り上がって、自分に酔ってるのを見せられている感じだ。もっと落ち着け。なお、エンドロールの押尾くんの歌の下手さには思わず笑った。彼は相変わらずいいキャラをしているな。
『プライド 栄光への絆』30点
地元の高校アメフトチームの活躍しか娯楽のないアメリカの田舎で、住民のプレッシャーに圧倒されながらも奮闘するコーチの話。数々の少年(といってもゴツい)たちの群像劇になっている。
前半、中望遠の手持ちズーミングがうるさくてたまらない。スクリーンが大きい映画館だときっと頭が痛くなるだろう。演出面では、ほとんどのキャラがたってない。人間を描くこともできず、試合も描けていない。何の脈絡もなくチームは突然強くなるし、試合シーンはたくさんあれど、意味不明なサインの連発ばかりでわかりにくく、盛り上がらない。アメフト映画は傑作揃いだから、この出来ではちょいと厳しかろう。