2003年の総括

……といっても、あまり厳密にやると日が暮れてしまうので、さらっと書いてみる。まだお正月休みが余っているというような方以外は、このページは飛ばしていただいた方が良いかもしれない。

2003年 気合の入った映画

2003年といっても、このサイトができたのが4月なので、それ以前の作品についてここで書くつもりはなかったのだが、一本あげるとすれば2月に公開された『アレックス』である。

あまりに残酷な事もあって、巷での評判はほぼ「悪い」作品だし、万人にすすめられる作品ではないが、個人的にはこの年で最も気に入った作品だ。奇抜な演出や構成を持つが、その意図がじつに明確で、テーマもわかりやすい。映画館にやってきた人に強烈なインパクトを与えるという意味で、非常に気合の入った作品だ。

映画館で見なければ、この作品の魅力は激減してしまうから、いまさら誉めても(公開している劇場がないので)意味がないのだが、私としては、ぜひ当サイトで批評したかった一本だ。

『キリクと魔女』も、インパクトの強さではなかなかだ。同じアニメーション作品である『ファインディング・ニモ』も、私は公開後に一般の劇場で再び鑑賞した。どちらもお客さんの入りが良く、終了後に満足の声をあげる姿が見られ、なるほどと納得したものだ。

『ターミネーター3』『チャーリーズエンジェル フルスロットル』『マトリックス・リローデッド/レボリューションズ』は、2003年を代表する話題作で期待も高かったが、どれもぱっとしない印象だった。『マトリックス・リローデッド』だけは高めの点数をつけたが、これとて前作を上回れたとは思えない。やはり、続編モノは難しい。

邦画で気合の入った映画というと、ほとんど思い出すことができない。アニメーションならばまだ『東京ゴッドファーザーズ』があるが、実写のほうは相変わらずひどい。

唯一『ヴァイブレータ』だけは、もう一度見たいと思わせる不思議な魅力があるが、あとは『座頭市』を除けばまったく話にならない。

気合の入った映画ということで、国別にざっと思い出してみたところ、フランスには『アレックス』があり、イギリスには『えびボクサー』があり、アメリカには『ファインディング・ニモ』『フォーン・ブース』があり、ドイツには『ビタースウィート』があり、中国には『HERO』がある。

だが、日本にはこれという決定版がない。公開本数の多さを考えたら何本もあっていいはずだと思うのだが……。

2003年 ダメダメな映画

先ほどとは打って変わって、たくさんの邦画のタイトルが浮かぶのは、日本人としてとても悲しい。『あずみ』なんぞはその筆頭だ。『バトル・ロワイヤルII 鎮魂歌』もあった。普通の感性があったら、正視に堪えぬダメ映画だ。

このサイトは、邦画に厳しいといわれているそうだが、ばかばかしい話だ。多くのお客さんが字幕鑑賞の不自由さを受け入れてまでも、海外の作品の方を見に行くのは、別に不思議でもなんでもない。単にそっちの方が面白い(=ニーズに合っている)からだ。いまの邦画が面白くないという事実は、彼らが証明している。このサイトは、面白い映画を国籍問わず高く評価するページなのだから、邦画が軒並み低い点数なのはそれだけ実力不足というだけのことだ。

私は上記2作品のような、「後進国がハリウッドの真似をして失敗したような」貧乏くさい映画ではなく、日本映画にしか出来ない事を、大衆向けの娯楽作品で提示してほしいと切に願う。一部のマニアやファンを相手にするのではなく、ごく普通のお客さんを楽しませるアイデアを出していかなければ、邦画(実写)の未来は暗い。



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