『エンド・オブ・ステイツ』70点(100点満点中)
ANGEL HAS FALLEN アメリカ/121分/クロックワークス/映倫:PG12
監督:リック・ローマン・ウォー 出演:ジェラルド・バトラー | モーガン・フリーマン

≪時代を先取りした予言映画≫

先日、サウジアラビアの油田施設が安価な自爆ドローンで攻撃され、同国の産油量が半分にまで激減した事件は、衝撃をもって世界に伝えられた。

これまで軍事用ドローンといえば米軍などが運用する高価で巨大な無人機のことであり、遠隔操縦で爆弾を落としたり偵察をしたりする、そんなイメージであった。

だが今では、ちっぽけで格安の自動操縦ドローンが目標に突っ込んでいく。激安カミカゼなイメージに変わった。

そしてこの、軍事革命的な戦術の変化をいち早く予測し、映像化しているのが『エンド・オブ・ステイツ』である。

これまで超人的な活躍でアメリカ大統領を守り続けてきたシークレットサービスのマイク・バニング(ジェラルド・バトラー)。満身創痍で、引退を考えていた彼だが、トランブル大統領(モーガン・フリーマン)が自爆ドローンの飽和攻撃にさらされ警護隊が全滅。自分だけが生き残ってしまったがために疑われ、FBIから追われる身となってしまう。

中東の紛争ではプアマンズ巡航ミサイルとしてのドローン運用がここ1年ばかり活発化していたが、劇映画のアクションとしてここまでの見せ場を作り上げ、このタイミングで公開するというのは神がかっている。

『エンド・オブ・ホワイトハウス』『エンド・オブ・キングダム』に続く3作目だが、思えば一作目も時代を先取りした内容だと、当サイトでは公開当時批評していた。先端軍事技術や政治経済の流れに敏感なプロデューサーがいるという証拠で、こういう映画は例外なく面白い。

このシリーズは共通して見ごたえのあるオープニングアクションを持つが、本作も例外ではない。

さらに本作では主人公と父親のユニークで痛快な共闘アクションもあるし、親子愛で泣かせる感動シーンもある。

命がけで要人を守る終盤のスペクタクルも、感情と見せ場の盛り上がりがシンクロしてとてもよくできている。

敵役も堂々たる男前で、悪事を働く動機についても理解できるものとなっている。決して卑怯者ではなく、決戦に挑む覚悟を持った人物としているのも気持ちがいい。

この映画は、真の悪は戦争であり、それを金儲けのために利用する連中だという価値観のもとに作られた反戦ムービーでもある。真の敵はアメリカ国内にもおり、大統領はだれも信用できない中で執務を行う一面がある、というわけだ。

こうした作品が、大衆の共感を得る時代。実に面白い。アクション映画としても面白い。このシリーズは、なにはともあれ見ておいたほうがいい、個人的にもオススメである。



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