『ザ・ファブル』75点(100点満点中)
監督:江口カン 出演:岡田准一 木村文乃

≪日本のアクション映画の最上級レベル≫

『ザ・ファブル』は『関ヶ原』や『永遠の0』など、いまや日本映画界を背負って立つ人気スターとなった岡田准一主演のアクションドラマ。週刊ヤングマガジン連載の南勝久の漫画が原作だが、よくぞあれをこうも見事に実写化したものだと驚かされる。

どんなターゲットも6秒以内に倒す殺しの天才として、裏社会でも都市伝説のごとき存在となっている殺し屋ファブル(岡田准一)。あるとき彼はボス(佐藤浩市)から「稼業を1年間休み、大阪で一般人として過ごせ」との命令を受ける。彼は佐藤アキラという偽名で、相棒のヨウコ(木村文乃)と兄妹のふりをして暮らし始めるが……。

冒頭の敵組織襲撃シーンにおける、一人vs集団戦闘が白眉である。数十名の敵に囲まれるファブルの主観映像が多用されるのだが、その画面にはターミネーターのごとく各々の戦力や射撃優先順位が表示され、観客に「腕利き暗殺者」の疑似体験を強いる斬新な映像となっている。これはなかなかの独創性を感じさせ、海外のアクション映画と比較しても近年まれにみる迫力といえる。

演じる岡田は現実でも格闘技教官のスキルを持っているため、本作では格闘振付として演出にも参加。その成果であるガンアクションの完成度はきわめて高く、映画では新境地を開いたといえるのではないか。

ストーリーもキャラクターも、そんなわけで漫画版に忠実なつくり。最強最悪の殺し屋が、身分を明かさず騒ぎを起こさず、もちろん人殺しは御法度の一年間をはたして過ごせるのか?

次々と迫る刺客やトラブルを、長年培った殺人術を"平和利用"して回避する。そんなアクションの爽快感と、じつは極度な猫舌で冷めたサンマしか食べられない"憎めない"キャラとのギャップで笑わせる。

女優陣では妹役の木村文乃に注目が集まる。原作にある着替えシーン等々、お色気露出がないのは非常に残念だが、下心あるオトコどもを誘惑して酔いつぶす異様な性癖をなまめかしい表情で演じているのは一見の価値ありだ。

少々不満が残るのは、クライマックスの戦闘場面。圧倒的多数相手にさすがのファブルも追いつめられる展開は相当ドキドキするし、岡田の熱演もあってとても良いのだが、敵殺し屋との対決シーンでやたらと苦戦するのはいただけない。基本的にファブルはタイマンでは無敵扱いのほうが、ダークヒーロー的でよいと思うし、原作のコンセプトにも近い。

一対一の殺害技術を極めた最強の殺し屋が苦戦するのは圧倒的多数相手のみ、というほうが説得力があるし、それだけで見せ場を作れる技量がこの監督にはあるはずだ。サービス精神からとは思うが、無理にファブルに匹敵する敵殺し屋を作り上げる必要はないだろう。

序盤のアクションの秀逸な出来と比較してそこだけが残念だが、日本のアクション映画としては相当上の部類に入る。まだ上映しているので、見ていない人はチェックして損はない。

ザ・ファブル コミック 1-18巻セット
読む価値有ります、面白いです。
オカダのはなし
本人の著書。こういうのを書けるってのがすごい。


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