「ジョン・ウィック:チャプター2」70点(100点満点中)
監督:チャド・スタエルスキ 出演:キアヌ・リーヴス コモン

今からでも参加したい良シリーズ

ストリクトなアクションシーンとシュールでくすっと笑える世界観。シャレのわかる大人向けキアヌ・リーヴス映画の第二弾だが、こうしたコンセプトが観客の支持を受けたことにチャド・スタエルスキ監督らが自信を得たか、一作目よりも良い仕上がりである。

前作のラストから5日後。殺し屋ジョン・ウィック(キアヌ・リーヴス)はイタリアンマフィアのサンティーノ(リッカルド・スカマルチョ)から汚れ仕事を強要される。業界の掟をやぶり依頼を断ったジョンに対し、サンティーノは自宅爆破という制裁を加える。さらに7億円もの賞金首となったジョンは、世界中の殺し屋から追われる羽目になる。

ドラクエの武器屋に入るときのような無駄なワクワク感を感じさせるテーラーなど、いくら前作でウケたからと言ってふざけすぎの世界観拡充にまずは苦笑。

このテーラー、妙に裏地にこだわるところで、銃弾を通さぬ生地を使った防弾仕様のスーツをオーダーできたりする業界御用達。

いくら弾を通さないと言ったって、そんなペラペラな布越しに被弾したらただじゃすまないだろうというまっとうな常識を持つ観客を尻目に、上着で頭を防護しながら敵陣に乗り込む斬新なスタイルの銃撃戦が展開される。

これは、おバカながら映画的にはなかなか良いアイデアである。なにしろ銃撃戦アクション最大の問題は、一発被弾したらほぼ終わりという点。だから主人公の弾は百発百中だし、敵の弾は芸術的なまでにヒーローを避けてゆく。どんなリアル志向の映画でも、基本的にはご都合主義が常となる。

ところがこのフルオーダースーツをきていれば、適度にキアヌを被弾させることができる。そのたびイテッ、イテッ、となるものの、なんとか命を落とさずに先に進める。死なないにせよ撃たれるものだから適度に緊張感も演出できる。

まさにテレビゲーム的感覚、ライフゲージがゼロになるまではやられても平気。映画によくぞこんな仕組みを取り入れたものだと感心する。

ほかにも45ACP弾7発だけで大組織と戦う前代未聞の現地調達戦闘とか、妙に実力ある感をかもしだすライバル、謎のスタイル抜群女、鏡の国での戦闘などバラエティに富んだ戦い、アクションの数々にお腹いっぱい。

一作目では、あれでも実は様子見していた監督が、期待通りの絶賛評価を見て温めていた引き出しをいよいよ開放した。そんな印象の2作目である。

ストーリーの荒唐無稽さもまたすごい。

とくに今回の悪役の馬鹿っぷりはひどい。前回のロシアンマフィアが、犬一匹で甚大な被害を被ったのを見ていないのかと思わず突っ込みたくなる。なにしろ今回の悪役ときたら、犬どころか思い出の詰まった家全体をふっ飛ばしてしまう。

しかも、おもしれーからこいつの家やっちまおうぜ的な中二病なのりときた。一作目を見た我々観客は、目を覆ってその後の彼らの運命に同情する仕組みである。

かくして知能指数0のバカ敵を、われらがジョン・ウィックが成敗する、スケールアップした二番煎じを楽しむことになる。前作のイタリア語版を彼らが見ていたらあんな目にも合わなかったろうに、お気の毒なことである。

ともあれ、このシリーズは他に類を見ないアイデアを豊富に持っており、監督の実力と意欲もまだまだ大丈夫といった感じ。今後も期待できそうで、まだ見ていない人は前作も含めて今のうちに参加しておくことをすすめておきたい。



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