「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」70点(100点満点中)
監督:ジェームズ・ガン 出演:クリス・プラット ゾーイ・サルダナ
本流よりも面白い
マーベル・シネマティック・ユニバースの中でも異彩を放つ『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズ。だが普通の大人の観客にとっては、その他の正統派ヒーローものを見るより、よほど楽しめるかもしれない。
宇宙海賊ラヴェジャーズを率いるヨンドゥ(マイケル・ルーカー)に育てられたピーター・クイル(クリス・プラット)。親父がろくでなしだったからか、今では彼も銀河のはみ出し者とヒーローチームを組んでいる始末。だがそんな彼の前に、実父を名乗る男エゴ(カート・ラッセル)が現れる。
前作で色々あって、生まれたてのベビー状態になってしまったグルート。その可愛らしいダンスの背後で、仲間たちが死闘を繰り広げるオープニングシーン。これが実にいい。とてつもない強敵と戦っているのに緊張感はゼロ。この力の抜け具合が本シリーズの美点であると、高らかに宣言して映画は始まる。
本編もギャグシーンが散りばめられ笑いっぱなしだが、とくにいけてるのがベビーグルートとアライグマ(?)ロケットとの噛み合わないやり取り。とくに爆弾ボタンをめぐる掛け合いは、そのシリアスな状況とのギャップに爆笑必至である。
CGキャラ同士の掛け合いが一番面白いというのも皮肉な感じだが、実写部分も決して手抜きはない。なにしろ特殊メークでわかりにくいがこの映画はやたらとキャストが豪華である。
ガモーラ役はゾーイ・サルダナ、ドラックスにプロレス界の元スター、デイヴ・バウティスタ。チョイ役でシルヴェスター・スタローンも出ているし、声優としてヴィン・ディーゼルとブラッドリー・クーパーがメインキャストを張る。主人公役のクリス・プラットがむしろ一番地味めという、余裕ありすぎな金のかけ方がまた笑える。
また、小さい子供には下手すりゃわからないようなシモネタも多数織り込まれる。仲の良い、トモダチ親子的な父と息子が見るにはこのくらいの毒はいいだろうと言わんばかりである。
また、そうしたお父さんたちには、懐かしいサプライズ出演も用意される。映画好きのお父さんならきっと子供にもそれを見せているだろうから、このネタはたぶん父子ともども楽しめる。なお、映画データベースサイトではさすがの配慮で伏せているが素人編集のウィキペディアには堂々とこの情報は掲載されているので、事前のチェックはお勧めしない。
映画のテーマは、主人公が生みの親と育ての親の間でアイデンティティーを見直すことになるというもので、徹頭徹尾、父と息子で見に来る観客を意識している。そう考えると38歳とは思えないセクシーな美尻をこちらに向け続けるゾーイ・サルダナや、ドラックスに不細工といじめられまくるマンティス役ポム・クレメンティエフの可愛らしい天然キャラなど、妙にお色気があるのも頷ける。
他のマーベル映画が本気でヒーロー映画を作っているから、こういう変化球にこれだけの金と労力をつぎ込める。むろん、アクションや見せ場の迫力たるや半端ではない。下手すりゃ本流作品以上に力を入れている。
そこまでやってこそ遊びというのは面白いんだという、わかっちゃいるけど真似出来ないこれぞ見本である。その余裕に、羨ましいほどの地力を感じさせられる。こういうものは、ハリウッドでも他ではそうそう作れない。
来年公開の新作では、いよいよこの愛すべきチョイ悪軍団が本家アベンジャーズに登場するという。本作を楽しんだ人は、躊躇なく見に行ってしまうことだろう。