「ジェーン」55点(100点満点中)
監督:ギャヴィン・オコナー 出演:ナタリー・ポートマン ジョエル・エドガートン
王道の西部劇だが逆に新鮮
「ジェーン」は、女性が主人公という以外は、基本的にはそれほど奇をてらっていない西部劇映画だが、その王道ぶりが現代では逆に新鮮に見える。
ジェーン(ナタリー・ポートマン)は、夫(ノア・エメリッヒ)が負傷し、さらに悪党たちから命を狙われていることを知って家に籠城することを決意する。だが自分一人では勝ち目がない。彼女は意を決してかつての恋人ダン(ジョエル・エドガートン)に助けを請う。
女性推しな今年のアメリカ映画らしく、善人の主人公が悪い奴らと戦うシンプルな西部劇「ジェーン」の主人公も女の子、それもナタリー・ポートマン演じるやせっぽちでか弱いそれである。
そこでこの映画では、ヒロインが一人ではなく、元カレに頼るというユニークな展開を見せる。女一人では何もできない時代に荒くれ者と戦争をやろうというのだから当然だが、フェミニストが顔をしかめそうなこの素直で現実的な彼女の選択は、むしろいまどきの女性客の共感を呼ぶだろう。
映画は彼女とこの元カレがわずかな時間で迎撃の準備を整え、ついにビショップ(ユアン・マクレガー)一味とあいまみえるクライマックスへ突入する。この迷いのない一本道な展開も、昔ながらのウェスタンの面白さを味わえて好ましい。
そしてこの後の戦いだが、序盤に重要人物が被弾することで一気にスリルを増し、緊張感を持ってハラハラドキドキ楽しむことができる。
背景となる人間ドラマも良い。南北戦争に引き裂かれた主人公男女の物語もロマンチックだし、女が生きにくい時代において責任を持って守ろうとする男たちの姿も惚れ惚れするほど恰好いい。
シンプルだが、登場人物たちのそうした愚直な愛情には胸打たれるものがあり、男女の仲も複雑になりすぎた現代人にとって、大いに考えさせられるものがあるだろう。映画も生き方も、本当はもっとシンプルなほうがいいのかもしれない。
元彼と今旦那、男二人の関係をもう少し描いていればさらに盛り上がったとは思うのだが、言葉少なな男たちの姿もまた格好いいわけで、これが一概に悪いとも言い切れない。
いずれにせよ「ジェーン」は、今の時代なかなか見られない堂々たる西部劇で、それもちゃんと現代の観客の鑑賞眼に耐えるしっかりとしたドラマと演技、アクションを備えているといえる。こうしたジャンルに興味がある人にとっては、間違いなくみて損のない一本と言えるだろう。