「スター・トレック BEYOND」70点(100点満点中)
監督:ジャスティン・リン 出演:クリス・パイン ザカリー・クイント

より一般向けのアクション映画になっている

監督を変え、脚本もより一般向けに手直ししたスター・トレック・ケルヴィン・タイムラインシリーズ第三弾は、なるほどスター・トレック風味のアクション映画として、多くの人が楽しめるであろう無難な出来に仕上がっている。

果てのない宇宙の旅から身を引くことを考えているカーク(クリス・パイン)に、不時着した宇宙船の救助依頼が届く。エンタープライズ号は即座にそれに応え現地に向かうが、そこで彼らは予期せぬ敵からの襲撃を受けるのだった。

J・J・エイブラムスから監督をバトンタッチされたジャスティン・リンは、生まれた時にはすでにシリーズが始まっていた世代の若い監督で、かつSF映画の経験は初めて。はたからみればギャンブルのような人選だが、これは要するにコンセプトを変更してさらに若い世代のライトユーザーを取り込もうということだろう。

実際オートバイアクションなど、「ワイルド・スピード」シリーズをよみがえらせたと評されるこの監督らしい今風のアクションシークエンスが多数見られる。ただ、こうした趣向は旧来のマニアがスタートレックに求めるものとは多少バッティングしかねない。

むろん、おなじみのキャラクタードラマとしての魅力はしっかり引き継いでおり、ウィットある会話と人間ドラマを主軸に据えた展開は変わらない。基本的には順当な続編ということに評価も落ち着くことだろう。

敵の正体などは、なんとなく現実の社会問題を彷彿とさせるが特段の説教臭さなどはないので、そういうものが嫌いな人にも問題はない。

目についた点としては、バイクアクションを盛り上げる設定の中にカークの父親のエピソードが出てきたりするが、ここへきてわざわざお父ちゃんネタを引っ張るあたり、巷で噂される再登場もあるのかな、という気にさせられる。あの父親の特攻シーンの熱さがあったからこそ、ここまでシリーズが盛り上がっているわけであり、あながち現実味のない話でもあるまい。

「スター・トレック BEYOND」はスケールの大きな宇宙ドラマということでIMAXで見ると格別だが、3D版を見たものとしては、もし2D版があるならそちらを推奨したい。奥行き感よりも少しでも明るい画面で細部のディテールを楽しんだ方がこの作品の場合、良いと思うからだ。

キャラクターが立っていることもあってもう何本か見ていたいと感じさせるシリーズだが、はたして次回以降はどうなるのか。なによりチェコフ役アントン・イェルチンを若くして不幸な事故で失った今となっては、この先がどうなるのか。引き続き注目していきたいところだ。



連絡は前田有一(webmaster@maeda-y.com 映画批評家)まで
©2003 by Yuichi Maeda. All rights reserved.