「エンド・オブ・キングダム」70点(100点満点中)
監督:ババク・ナジャフィ 出演:ジェラルド・バトラー アーロン・エッカート

突っ込みどころ満載で面白い

9.11同時多発テロ事件の発生は、アメリカ映画に大きな影響を与えた。007シリーズをはじめとするアクション作品はとくにそうで、荒唐無稽な悪役は姿を消し、全体的に深刻なムードをまとうようになった。

しかし、本当はご都合主義満載のノーテンキなものだって見たい。そんな人に「エンド・オブ・キングダム」は最適だ。

ホワイトハウスがアジア系テロリストに占拠されるショッキングな設定で話題を呼んだ「エンド・オブ・ホワイトハウス」の続編だが、ストーリーは独立しているのでこの2作目から見ても全く問題ない。前作から大幅に増えた予算にモノを言わせ、火薬と銃弾をひたすら消費して盛り上げてくれる。質より量で勝負の、まさに特盛ポリティカルアクションだ。

英国首相の葬儀に集まった各国首脳を狙った同時多発テロが発生。シークレットサービスのマイクと米大統領も孤立無援となり、徐々に追い詰められてゆく

この序盤のテロ攻撃がとんでもない見せ場になっていて、それぞれのVIPとともにロンドンの瀟洒な建築物が盛大に爆破されてゆく。国のお偉いさんが、そんなところで何やってんのと思うものの、迫力だけはすごい。

中でもわが日本国の首相が壮絶な討死を遂げるシーンは前半の大見せ場といっていい。場所といい爆発の大きさといい、いくらなんでもやりすぎで、もはや笑いしか出ないほどのド迫力。

対テロ戦争後の映画らしく、「終わらない復讐の連鎖」的なテロリストの言い分にも耳を傾けるシーンがあったりして一応の公平性を見せてはいるものの、類似作品と異なるのはその後の展開。「だから何なんだよ」といわんばかりに主人公がテロリスト軍団をゴミのごとく蹴散らし、アメリカこそ地上ナンバーワンの国家だと謳いあげる。その傲慢さには思わず脱帽だ。

ここまで自由に作られると、リアリティがどうこうなんて野暮なことを言う気はなくなってくる。たまにはこういう、突き抜けた娯楽映画を男一人で見に行きたい。



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