「花芯」55点(100点満点中)
監督:安藤尋 出演:村川絵梨 林遣都

初ヌード村川絵梨の頑張りが光る

花芯とは子宮の意味があるそうだが、そのタイトルが示唆するように、映画「花芯」は女としての本能を大切に生きたヒロインの半生を描く文芸作品である。

園子(村川絵梨)は親が決めた夫の雨宮(林遣都)と結婚した。雨宮は園子にぞっこんだったが園子はどこか日々の暮らしに満たされぬものを感じていた。そんなとき、夫とは違ったタイプの上司である越智(安藤政信)に強く惹かれてしまう。

文春に見つかると大変な、まさに今はやりの不倫ものである。

しかしこの小説が発表された57年当時は、現代以上にタブーであったことだろう。なにしろ今でこそ平和主義の尼僧といったイメージの瀬戸内寂聴は、この小説を書いたせいで子宮作家などと長らく言われ続けてしまったのである。日本史上、ベッキーとともに不倫でひどい目に合った2大女性といえるだろう。瀬戸内寂聴は書いただけだが。

映画はごくフツーのブンゲイ映画といった感じで、悪く言えば特筆すべき点はなく、よく言えば違和感なく入り込んでみることのできる、無難な一本である。

園子というキャラクターは、貞淑な妻が当たり前のように求められた時代に、その枠から外れたすべての人たちの共感先となる自由な女性といえる。むろん、時代と社会制度によって抑圧される中で、いつでも好きに生きられたわけではないが、少なくとも自分の意思を押し殺すことなく、しっかりと守り通した、そんな女性である。その生きざまは、現代の女性にも少しは励みとなるかもしれない。

彼女は、純粋にセックスに興味を持って浮気をして、それを直後に夫に言うようなところがある。NTR的には最高の女性だが、彼の夫にこの妻の内面を理解し、受け入れることは無理だろう。

さて、彼女を演じるのはかつての朝ドラ女優・村川絵梨。初ヌードは相当覚悟の上だろう、少なくとも上半身は完全にオープンさせている。

安藤尋監督はピンク映画の経験があるからか、濡れ場にはこまやかな心遣いが感じられる。たとえば騎乗位では女性の自然な前後動が見られるし、正常位では下になっていても自分から腰を動かしている。これらは肉食女子なら当然の動きといってよい。

濡れ場でも首から上だけで演じる女優が多い中、しっかりキャラクターを意識している点は評価したい。もっとも、動かし方が少々早すぎるきらいはある。もうすこしゆっくりとグラインドさせないと滑稽なので、そこはさらなる研究が必要であろう。

村川絵梨は美人なので、こうした濡れ場ふくめていろいろなアラを許せてしまう部分がある。和服になってからは見た目の上でもこのキャラクターをモノにしている感じである。縛れない心を感じさせる、的確な演技を見せつけたといえるだろう。



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