「ロスト・バケーション」60点(100点満点中)
監督:ジャウマ・コレット=セラ 出演:ブレイク・ライヴリー
ライアン・レイノルズも歓喜のブレイク推しサメ映画
安直な邦題、安っぽいCGサメ、いかにも金のかかっていない少数キャストのワンシチュエーションもの……。「ロスト・バケーション」は、ブレイク・ライヴリーの名前がなければ「マツコ&有吉の怒り新党」の新3大サメ映画あたりにノミネートされそうな鮫パニックである。
秘境のビーチにやってきた医学生でサーファーのナンシー(ブレイク・ライヴリー)。沖合にある奇妙な物体をみつけた彼女は、そこで突然サメに襲われ負傷する。必死に近くの岩場に泳ぎ着くが、血液の臭いからか、サメは彼女のそばを離れない。まもなく満潮になり、彼女の岩場は水面下に沈む。岸は目に見えるほど近い。残された時間はわずか。はたして彼女の運命は……。
件の番組でサメブームを仕掛けた張本人の映画批評家としては、「ロスト・バケーション」のようなキワモノパニック映画は外せない。喜び勇んで見に行くと、なかなかどうして、ギャグ抜き、超真剣につくられたガチンコのサバイバルドラマであった。
まずは前菜代わりにヒロインのサーフィンシーン。ボディダブルを使っているものの、アップではこれみよがしにエロいカメラワークがブレイク・ライヴリーの肢体をなめまわす。あまりに撮り方がエロいので、苦笑が漏れるほどだ。なぜキミはわざわざラッシュガードのジッパーを一番胸の谷間が見える位置で止めるのか。
ブレイク・ライヴリーは175cm超えの長身が魅力のモデル体型。美人というより個性的な顔立ちだが、スタイル抜群でぷりケツの持ち主なのでビキニ姿は目の保養である。ちょっぴり不自然に大きいバストも、先ほどのようなチラ見せからラッシュガードを脱ぎ捨てての全景披露まで、くまなく見せる。まさに、デッドプールも大歓喜のブレイク推し映画となっている。
肝心のサメパニック部分については、岩場に取り残された女の子が、予想外の奮闘を見せるあたりが見せ場となっている。
彼女の持ち物は割れたボードくらいしかないと思うのだが、意外なものを利用してしぶとく生き残る。一番だいじなものは、モノではなくあきらめない心なのだと勇気づけられる。
とくに笑ったのがあるものを包帯代わりにする場面。ブレイクほどに細い脚を持っていない全女子が、ありえねーふざけんなと悪態をつくであろう名場面である。
サメのみならず、岩場のサンゴだとか○○○だとか、海で遊んだことのある人ならだれもが実感できるイタいものがいくつも登場し、見ているだけでこちらも痛い。運命を共にすることになるカモメ(これはCGでなく実物)もいい味を出している。
カメラは徹頭徹尾男性目線だが、残虐血まみれ食いちぎり的な直接描写はないので(傷口アップはある)、ブレイクファンの女性でもいける品の良さを感じさせる。
女の子も、あんまり美味しそうなカラダをもっているというのも考え物。それをつけ狙う相手から身を守る苦労というのは、全ての若い女性共通の悩みであり、また共感できるシチュエーションである。
「男性目線のカメラ」が特徴的な映画「ロスト・バケーション」が象徴するのは、つまりそういうことなのである。