「エクス・マキナ」80点(100点満点中)
監督:アレックス・ガーランド 出演:ドーナル・グリーソン アリシア・ヴィカンダー
妙にリアリティのあるAIもの
「エクス・マキナ」は「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」「マッドマックス 怒りのデス・ロード」など並みいる超大作を押し退けてアカデミー視覚効果賞を受賞したわけだが、なるほどB級な筋書きに超A級の見た目をくっつけたようなユニークなSF映画である。
検索エンジン最大手企業の社員ケイレブ(ドーナル・グリーソン)は、大富豪で知られる創業者社長のネイサン(オスカー・アイザック)の山荘に招かれる。この施設で彼は、なんとAI(人工知能)を搭載した精巧な女性ロボット・エヴァ(アリシア・ヴィキャンデル)を完成させていた。若き優秀なプログラマーであるケイレブは、彼女との会話を通じて最終チェックをするため、全社員から抜擢されたのであった。
あれだけの機密を指紋や網膜認証のひとつもなく、ローテクなカードキーだけで守っているなど、突っ込みたい部分は多々ある。しかし、脱ぐべきときに脱ぐべき人がちゃんとすべてを見せてくれるつくりなので、多少のあらは許すことにする。
さて、この映画は流行りの"人工知能"を、エヴァとの会話という形で取り扱っているが、人間が本能的にAIにたいして感じている不気味さの正体をうまく描いている。
それは「機械が合理的でない判断をするかもしれない」ということにつきるわけだが、たしかに彼らがそういうことをし始めたら、人間にとってはアイデンティティー喪失の危機である。それはスカイネットが核ボタンを押そうとするより、ある意味恐ろしいことかもしれない。
そんな、人間とAIの境界線が曖昧になる恐怖を、この映画では主人公が腕を切り始める場面で端的に表現している。このあたりから、とてつもない真相とどんでん返しの予感が匂いたちはじめるが、それについてはあえてなにも言及しないでおくとしよう。
ともあれ、そうした哲学的なテーマについては映画を見てから考えればいい。それ以前に「エクス・マキナ」は、じつに面白いストーリーをもつスリラーである。舞台は外界から閉ざされた山荘、登場人物はわずか数名。こういうミニマムな舞台なほど、サスペンスは工夫をこらされ面白くなる。
グーグルやアップルを思わせる設定、浮世離れした経営者が登場するのも楽しい。今どきの映画のリアリティとはこういう設定から生まれるというわけだ。私たちが持っているスマホがじつは……というショッキングな話も、「シチズンフォー スノーデンの暴露」をみたあとでは絵空事と笑ってはいられない。
そんなわけで、人工知能のりんなちゃんに怖い話を聞くのが大好きなアナタにはとくにおすすめの一本。わくわくするほど現代的な世界観とストーリー、そして全ハリウッドが認めた最高級の映像クオリティ。おまけに目の保養というほかない美しいヌードの数々……。興味を持った人は、迷わず映画館にGOだ。