「エヴェレスト 神々の山嶺」55点(100点満点中)
監督:平山秀幸 出演:岡田准一 阿部寛
本格山岳映画になり切れなかった
山岳映画には本格的なものが少なくないが、「エヴェレスト 神々の山嶺」は世界最高峰エベレストという舞台をえながら、いまひとつ高みに登り切れなかった。
イギリス人登山家ジョージ・マロリーはエベレスト登頂を果たしたのか否か……。登山愛好家の永遠の謎を解き明かすカギである彼のカメラが発見された。それを見つけたカメラマンの深町誠(岡田准一 )は、その謎を追ううちに登山家の羽生丈二(阿部寛)という人物に突き当たる。
役者も揃っているし舞台装置も完璧。しかしそれでもうまくいかないときもある。
岡田准一が、普段のヒロイックな雰囲気を崩してバテバテのだらしない演技を見せているのは意外性があっていいし、対する阿部寛の安定した怪演ぶりも悪くない。
ただ、二人ともしゃべりすぎで、しかもどこか文学的な格好いい言葉ばかり発するのでかえって安っぽく見えてしまっている。山の映画に多くの台詞は不要である。
ラストで歩いてくる人物の演技も、ヨレヨレという言葉が服を着ているような足取りには芝居くささを感じてしまう。山で疲れたときに、あんな無駄な動きはむしろしない。さらに、ここは力強くいきることを決意した大事な場面でもある。体は消耗していても、目が死んでいてはいけない。言葉だけ格好いいものをかぶせても、目の前の人物との落差にしらけるばかりだ。
風景には本物の迫力があるだけに、こうした人物演出上のいたらなさがより目立つ。それが本作をあと一歩の印象にしている原因である。