「セーラー服と機関銃 -卒業-」35点(100点満点中)
監督:前田弘二 出演:橋本環奈 長谷川博己

演技とオーラは薬師丸、しかし顔なら1000年天使

男にとって、目の前の美人のアラを見つけるのはおつなものだが、映画となると話は別。見えていながらそれをカバーしていないスタッフの荒っぽい仕事ぶりには、皆がっかりするものである。

組員4人の目高組を受け継いだ女子高生、星泉(橋本環奈)。彼女は組を解散させ、こわもての元組員らと商店街でファンシーなカフェを営んでいた。だが彼女らが守った町の平和を引き裂こうと、巨大な闇の勢力が迫っていた。

橋本環奈こと、天使すぎる1000年に一人の逸材は、アイドル界では現役最高の美少女といってよい。彼女の場合、とくに歌っているときの顔の美しさは図抜けていて、年齢を超越した妖艶な魅力を放つ本格派のアイドルである。歌顔というものは、たいてい産卵中のサケみたいになるものだが、彼女はどこで静止ボタンを押してもかわいい。奇跡の1枚どころか24コマ全部奇跡である。

そこのところは前田弘二監督もよくわかっているようで、ちゃんとたっぷり大画面で堪能できる見せ場を用意している。あれだけで男性客は、入場料金の大部分を回収できるだろう。

角川映画40年記念作品として、その全盛期幕開けのベルをならした「セーラー服と機関銃」の続編を作るというのだから、さすがに気合いが入っている。演技もまあまあでき、こわもてを引き連れるくらいの怖いもの知らずなイメージを隠し持つ橋本をキャスティングしたのは正解である。あの頃の薬師丸ひろ子に匹敵できるアイドルが現在いるとは思えないが、天使さんなら多少は対抗できよう。少なくとも顔の可愛らしさ、歌唱の魅力では負けていない。

ただ、これまた薬師丸と同じように彼女はちょっとスタイルがよろしくない。天使にも天は二物を与えないんだなとホッとすると同時に、それがまた色気に通ずるのだが、一般的にいえばマイナスな部分をカバーしようとしない撮り方にはイラつきを感じる。

カメラの構図、セーラー服のサイジング、隣に並べる女優の選択など、やれることはあるのだから、もうすこし1000年に一人さんを綺麗に見せる努力をすべきである。その点がアイドル映画としては弱い。

また、コメディシーンを必要以上に引っ張ったりと、作り手側がやってみたいことを詰め込みすぎでボリュームが多すぎる。

あくまで任侠ものにアイドルを放り込むといったシンプルなつくりにしていれば、もう少しまとまりがあったと思うのだが、結果的にはジャンルがあやふやで作品ルールも伝わりにくく、テンポが悪くなっている。

オリジナルが偉大すぎる以上、開き直って一点突破くらいの気持ちで作ってくれれば、潔さくらいは感じられたろうと思うのだが。

ともあれ、映画初主演も器用にこなした橋本環奈には、ぜひ今後も様々な役をやらせてみたいと思わされた。それはひとつの収穫と言えるだろう。



連絡は前田有一(webmaster@maeda-y.com 映画批評家)まで
©2003 by Yuichi Maeda. All rights reserved.