「ザ・ガンマン」55点(100点満点中)
監督:ピエール・モレル キャスト:ショーン・ペン イドリス・エルバ レイ・ウィンストン マーク・ライランス
何か月で、このカラダ?
『眠りなき狙撃者』81年と、ちょいと古い原作をもとにした「ザ・ガンマン」だが、めっぽう強い主人公を演じたショーン・ペンが異様なまでの身体づくりをしているせいで、妙に本格感あふれる異色作に仕上がった。
コンゴ共和国で大臣暗殺の任務を終えたジム(ショーン・ペン)は、恋人アニー(ジャスミン・トリンカ)を置いたまま、涙を呑んで国外へと去る。8年がたち、殺しの仕事の贖罪のためNGOで井戸掘りの重労働にいそしんでいた彼は、明らかにプロとみられる連中の襲撃を受けるのだった。
映画の舞台となる昔のコンゴを今のどこかに当てはめて、そこで儲ける多国籍企業や利権にうごめく怪しい勢力の謎解きをすることもできなくはないが、そんなことより見るべきはショーン・ペンの肉体である。
いったいぜんたい、あの歳でなぜ急にここまでバルクを増やし、キレキレの身体を作ったのか。上半身裸のショーンさんを見た瞬間、頭の中にライザップのCMのファンファーレが鳴り響く。マドンナもびっくりのボディビルダーがそこにいる。
動きも銃声も凝りに凝っていて、たとえば銃を持った人物がピッキング作業のためしゃがむとき、いつでも攻撃態勢に移れるように彼は拳銃を右ひざに挟む。そして立ち上がる時はそのまま銃を持つ。
伊東家の食卓で採用されてもおかしくない、なるほどのアイデア。プロはこうするのかと感心しきりである。
ということで本作は、なんともディテールに凝った映画である。銃撃戦における音場の囲み感もかなりのもの。殺し方もバリエーションにとんでいて、詳しく書かないが大ボス戦のオチの付け方もえらい派手さがある。
撮影監督出身で、「96時間」を撮ったピエール・モレル監督だからこそのアイデア豊富状態だが、それにしてもやはり謎なのはあの筋肉である。いや、映画はそこそこ面白かったし平均点以上ではあるものの、ここにきてハリウッドマッチョランキング最前線に躍り出たショーン・ペンの頭の中こそが、一番気になる今日この頃なのであった。