「ジョン・ウィック」65点(100点満点中)
2014年/アメリカ/カラー/101分/R15+ 配給:ポニーキャニオン 監督:チャド・スタエルスキ 脚本:デレク・コルスタッド キャスト:キアヌ・リーブス マイケル・ニクビスト アルフィー・アレン エイドリアンヌ・パリッキ
ユニークなアクションと世界観
近接戦闘アクションに特化した「ジョン・ウィック」は、なるほど確かに新鮮だが、まだまだ改良の余地がありそうだ。
妻の思い出というべき愛犬を、マフィアの若僧に殺されたジョン・ウィック(キアヌ・リーヴス)。実はジョンは元凄腕の殺し屋であり、すでに足を洗っていたのだが、この暴挙により怒髪天を衝く勢いで怒りの復讐を開始する。
ガンフーと名付けられた柔術アクションは、室内などでゼロ距離といっていいほどに間合いを詰め、敵の銃撃を交わしつつとどめを刺していくユニークなもの。
銃撃戦でもこれならば広角ではなくナチュラルな画角のレンズを使えるし、そのほうが観客にとって臨場感はあがる。さらにキアヌの美しい顔も動きもはっきり楽しめる。なによりほかのアクション映画では見られないから新鮮である。
チャド・スタエルスキ監督はマトリックスシリーズでキアヌのスタント担当だったそうで、彼をどう動かすかについてはさんざん研究をしたのだろう。その成果がここで結実している。
少しだけ惜しい点は、ところどころキアヌの動きの鈍さが目立つ点。拳銃をリロードする動きにしても、モタついているように見える部分がある。撮影でカバーし切れぬほどキアヌが年をとったとも思えないのだが。
あとは、ガンフーは飛び道具に特化した方がよかったのではという気もする。柔術的な関節技などが挟まれるのだが、これが爽快感をそいでいる。それよりも、スパスパと敵をケチらしていくようなアクションに向く動きだと強く感じる。
現状では、いいところでザコに捕まって、それを倒すのに関節の取り合いで手こずってテンポが悪くなっている。そもそもキアヌは線が細すぎて、打たれ強さなどタフさの面では説得力皆無なので、そこも考慮した演出にしてほしいところ。
意外といけるのが、シュールな笑いを生み出す世界観の設定。犬一匹のために世界最強ロシアンマフィアを壊滅させるなんてのもそうだし、大けがしていても謎の錠剤を飲むとめっぽう強くなるなど、なんだかスーパーマリオでもプレイしているかのようで笑える。
ご褒美コイン方式でいろいろ汚れ仕事を引き受けてくれる謎の暗殺組織のシステムもまた笑える。こうした奇妙な世界観により、作中ルール的なものがとらえきれずスリルを生んでいる。
いくつかの問題点はあるものの、しっかりした個性があり、次を見てみたいと思うだけの魅力がある。続編が楽しみだし、早く見てみたい。