「カリフォルニア・ダウン」80点(100点満点中)
監督:ブラッド・ペイトン 脚本:カールトン・キューズ 出演:ドウェイン・ジョンソン カーラ・グギーノ

トラウマのない人限定

日本ではタブーになってしまったが、アメリカでは「カリフォルニア・ダウン」のような津波や地震を主菜とするディザスター・ムービーが相変わらず作られている。しかも東日本大震災の凄惨な映像を入念に研究してから作られているわけで、皮肉にもその映像の迫力たるや過去最大級である。

消防レスキューヘリのパイロット、レイ(ドウェイン・ジョンソン)は、ある過去の出来事以来、妻エマ(カーラ・グギーノ)との仲が冷え切っていた。そんな折、未曽有の大地震が発生、幸い飛行中で難を逃れたレイはそのまま高層ビルに取り残されたエマを救いに行くが……。

ドウェイン・ジョンソン主演の家族愛ムービーであるから本来小中学生も含めて楽しめる娯楽映画なのだが、こと日本においてそれは不可能だ。東北の被災地はもちろん、それ以外の子供たちにとってもこの映像は余りに刺激が強すぎる。この映画における震災シーンは、地震、津波系の映画としてはこれまで例がないほどに強烈だ。

劇中でも解説しているが、なにしろ福島をみているから物凄い絵作りである。ほとんど空爆かゴジラの襲撃かというほどの大都市破壊。あまりに容易く崩れゆく様子には、いくらなんでもアメリカ建築もろすぎだろうと突っ込みたくなるほどだ。

そのスペクタクルが余りに凄まじいのでこれは絶望しかないかと思いきや、さすがはザ・ロック夫妻、まったく動じていない。あらゆる自然災害をもろともせず、陸海空あらゆる乗り物を乗り継いで、途中でお色直しまでして、愛するわが子を捜しに走る。

途中では暴徒をけちらし、ついでに数十人の人命救助を果たしと、アベンジャーズも顔負けの大活躍である。私はこのアメリカ映画のノーテンキさが本当にうらやましい。

家族愛マンセーがテーマなのはど真ん中の王道。災害パートが冗談みたいに大げさなものであることも、迷いなくお涙ちょうだいに持っていく演出もここまで来ると逆に好ましく、号泣確実といったところだ。

まともな人たちが救われる展開はご都合主義といわれるだろうが、そこには作り手の確固たる正義と信念があるわけで、決していやな感じはしない。災害をネタにした映画ではあるが、不謹慎とも思わない。

あくまで日本ではトラウマのない方限定となるが、見て損のない真っ正直な娯楽映画といえるだろう。



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