「クーデター」70点(100点満点中)
監督:ジョン・エリック・ドゥードル 出演:オーウェン・ウィルソン ピアース・ブロスナン

もし海外赴任中にクーデターが起きたら

北朝鮮の潜水艦が数十隻出撃するなど38度線を巡る小競り合いがニュースになっている昨今。映画「クーデター」が公開されるのは偶然とはいえ、タイムリーである。

幼い娘二人と妻を連れ、東南アジアの某国に赴任してきたジャック(オーウェン・ウィルソン)は、しかし翌朝突然のクーデターぼっ発に巻き込まれる。外国人排斥運動の名のもとに白人たちが殺害される中、はたして右も左もわからぬ彼ら一家はどこへ逃げればいいのだろうか。

一夜あけたら町は銃を持った敵だらけ。もし韓国で戦争となれば、本作のオーウェン・ウィルソン一家のようなドラマが実際に繰り広げられないとも限らない。そのとき外国人たるわれわれはどこへ逃げればいいのか。「クーデター」は、そんな実感あふれる恐怖を描いたアクション映画である。

撮影はタイ北部ということだが舞台となる国名はあえてあきらかにしていない。表現の自粛だろうが、それがかえって普遍的な恐怖を感じさせる。リアリティある設定の割にアクションの見せ場は少々非現実的で一瞬なえかけるが、まじめに作られた映像演出によりなんとかもった感じ。

なによりおもしろいのは、クーデターの原因がどこにあるか明らかになる部分である。ピアース・ブロスナン演じる謎の男が語るその場面で、多くの観客はちょっとしたショックを受け、なるほど現実はそうだよなと納得するに違いない。

それをふまえて最終局面、家族がどこの国を頼ることになるかを考えれば、この映画の作り手が言いたいことのいくらかがわかるに違いない。

そんな社会派風味で味付けられた「クーデター」を、私は子供のいる夫婦に勧めたい。たまにはこういう映画を二人でみれば、隣のくたびれたおっさんあるいはオバ、いやお嬢さんがいかに大切な存在か、思い出すというものだ。お子さんを預けてレイトショーあたりでぜひどうぞ。



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