「最後の1本 〜ペニス博物館の珍コレクション〜」70点(100点満点中)
監督:ジョナ・ベッカー
どちらが人類代表のペニスなのか
アイスランドの港町フーサヴィークに、あらゆる動物のペニスだけを集めた博物館があるという。なんだか罰当たりな気がするが、国防上、キリスト教に改宗しつつも北欧土着信仰をを守り続けたこの国らしいおおらかさのたまもの、という事なのか。
ともあれその博物館主シグルズル・シッギ・ヒャールタルソンに密着したドキュメンタリーが「最後の1本 〜ペニス博物館の珍コレクション〜」。最後に集め残したヒトのペニス標本を手に入れるまでを描いた、熱き挑戦の記録である。
もともとシッギはあるきっかけでペニス収集を始めたが、自宅に収まりきらなくなるほど集まったところで奥さんが「博物館でも開いたら」と心優しいアドバイスをしてくれたのが始まりだという。
どう考えても家に置いておきたくなかっただけだろうという気がするが、ともあれ愛する奥さんの助言を真に受け、いや受け入れ、彼は博物館を開館する。
人間のペニス標本だけは諸事情でなかなか集まらなかったが、この度それをしった2名が、「自分の名刀こそ人類代表にふさわしい」と名乗りを上げた。映画はそんな二人の「人類代表権」争奪戦の様相を呈していく。
アイスランドは土葬だから、ペニスがないと笑いものになるなどといった話をくそまじめに議論する様子にはには大爆笑。なにしろ話の根幹がこっけいなものだから、笑わずにはいられない。
ほかにも、この国には法定ペニス長というものがあって、それ以下だと結婚生活がダメだとか、いったいどこから突っ込めばいいのかさっぱりわからない展開に振り回される。
なんでもその「法定ペニス長」は12.7cmだそうで、これ以下だと離婚されても仕方がないんだそうだ。これを読んでいる法定以下の方は、アイスランドに生まれなくてよかったと思う瞬間であろうが、それにしてもとんでもない人権侵害である。笑いが止まらない。
二人の男、とくにあとからでてきたアメリカ人は、普通時だか使用時だかしらないが18cmオーバーの巨根自慢。
だが、もう一人の老紳士もかつての女遍歴を写真までみせながら自慢しつつ高性能をアピール。相手の女の子たちにとっては大迷惑な展開である。いまは女の子、ではすでにないかもしれないが……。
くだらないモノの話だが、それでも思わずこだわってしまうのは男性なら多かれ少なかれ理解できる部分でもあるあろう。音楽がいいのと、せつない幕切れが意外にも感動の涙を誘う好編である。
きっちりと時間をかけて取材し、起承転結をつけて構成した丁寧さも評価できるし、なによりいろいろとドラマがあるいいドキュメンタリーといえる。法定長さ以上の方には安心しておすすめできる一品である。