「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」70点(100点満点中)
監督:クリストファー・マッカリー 出演:トム・クルーズ ジェレミー・レナー

メインスタントがアミューズ扱い

60メートルのレッドカーペットを歩ききるのに1時間以上かけるトム・クルーズは、マスコミ泣かせのハリウッドスターである。サインも写真も断らない、それは彼のプロ意識によるものだが、そんなトム・クルーズのサービス精神がもっとも反映されているのが、自身の製作会社で作り続けている「ミッション:インポッシブル」シリーズである。

世界中の紛争地帯で暗躍する謎の組織"シンジケート"を追うイーサン・ハント(トム・クルーズ)だったが、所属するIMFがCIA長官と対立、解散を命じられてしまう。イーサン自身もミッション中に敵につかまり、窮地に追い込まれてしまう。

来日して宣伝しまくった軍用機しがみつきスタントは、映画の序盤にいきなり現れる。そのすさまじい迫力と格好良さには全館客がしびれること間違いないが、それ以上にこれほどのスタントシーンがあっさり終了してしまうことに驚くだろう。

間違いなくこのスタントはこの映画最大の見せ場の一つだが、そんな角飛車を最初の一手で使い捨てにしても、有り余る魅力がこの映画にはあるという自信の表れである。

実際、本人が顔出しで運転する大型バイクのチェイスシーン、カーチェイスシーン、水中アクションとどれも出来映え、アイデアともに申し分がない。水中アクションだけはもう少し見せ方を考えたらと思うものの、さほどの不満でもない。なにしろこれを53歳のオッサンがやっているかと思うと、自分も鍛えなおさなくてはとモチベーションがあがることうけあいだ。鍛えたところでトム・クルーズになれるわけでもないのだが。

一方、スパイ映画のもう一つの魅力である国際謀略の二転三転、スケールの大きな諜報戦、といったミステリ風味は相変わらずいただけない。

なにしろイーサン・ハントはスパイ業界一のフェミニスト。論理無視で常に美人を信じているが、それはだいたい間違っていない事になっているので、この映画に裏切りだのなんだのといった緊張感を求めるのは無理がある。公聴会のお偉方がいう「だいたいIMFはいつも幸運だけで切り抜けてきたようなもんじゃないか」との指摘には、誰もが爆笑確実である。どう考えてもその通りだからだ。

イーサンが追うシンジケートとやらが、どう考えても現実のCIAをモデルにしていたりなど、見ようによっては皮肉っぽい部分もあるが、そんなわけでさほどのスパイ映画的快感は得られず。

ヒッチコックへオマージュを捧げようが、必死にスパイ映画ぽさを出そうが、やはりそれ以前にこのシリーズはトム・クルーズのレッドカーペットの映画化であり、またそうであってほしいものなのである。



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