「ジュラシック・ワールド」45点(100点満点中)
監督:コリン・トレヴォロウ 出演:クリス・プラット ブライス・ダラス・ハワード
序盤がもたつく
興行収入がいいからといって、出来がいいとは限らない。要の東西問わずそれは一つの真実だが、全米オープニング興収歴代ダントツトップをたたき出した「ジュラシック・ワールド」ですら例外ではない。
本物の恐竜を再現したジュラシック・ワールド。若き運営者のクレア(ブライス・ダラス・ハワード)はDNAを操作した新種の肉食恐竜をパークの目玉として作り出すが、飼育員オーウェン(クリス・プラット)は自然の摂理を無視したそんな商業主義に強く反対する。
ダメ作の誉れ高いシリーズの途中作をすっ飛ばして、傑作たる一作目の続きからリブートする。「ターミネーター:新起動/ジェニシス」と同じく、最近流行のやり方だ。
そんな「ジュラシック・パーク」(93年)の後日談、あのパークが実はパワーアップして完成しており、観光客がわんさと訪れている……となれば、かつてCGのブラキオサウルスに驚かされた元少年のおじさまたちは出かけないわけにはいくまい。
かくして息子を連れた元ジュラシックパークファンが劇場に殺到し、前述の好成績となったわけだが、映画が始まるとそうした期待感に冷や水をかけるかのようにテンションの低いオープニングである。
やれ経費がかかるだのリピーターを獲得して利益率を上げるだの、架空のパークの架空のビジネス談義を延々とやられて、観客のテンションも下がりゆく。観客の期待するものと監督さんの見せたいものの乖離を感じずにはいられない。
しかもその前ふりパートがやたらと長く、いつまでたっても恐竜が逃げ出さない。逃げ出して阿鼻叫喚の地獄絵図になる事は全員わかっているので、ずいぶん引っ張られた印象だ。
後半の展開は、普段悪役になりがちなあの恐竜が活躍する、これまで肩身が狭かった肉食恐竜ファンの男の子たちが大喜びするすばらしいアイデアである。だからこそ、序盤のもたつきが悔やまれる。
見せ場は単調で、恐怖感の演出もありきたり。天下のジュラシックパークシリーズが韓国製「大恐竜時代 タルボサウルス vs ティラノサウルス」(12年)のアイデアを丸パクリというのもいただけない。コリン・トレヴォロウ監督の力量不足はあきらかで、抜擢した製作総指揮のスティーヴン・スピルバーグにクレームの一つも届けたくなる。
考証の古さも1のイメージを損ねないためとはいえ、最新のそれを求めるファンには不満が残るだろう。
遺伝子組み替えで作り出した架空の巨大恐竜が今回のメインとなるが、そんなものはもはや恐竜ではなく怪獣なのであって、シリーズの根幹に関わる大問題といえなくもない。
ともあれ、遺伝子組み替えをディする隠れテーマはアメリカ製映画としてはなかなか勇気があるもので、TPPで煮え湯を飲まされつつある我が日本としては痛快に感じられる。
と、いろいろ問題はあるが、小学生の男の子に見せられるこの夏のハリウッド映画としては、ほかにあまりないのでグダグダいっても仕方がない。細かいことは気にしない精神で楽しむほかはないだろう。