「7500」60点(100点満点中)
監督:清水崇 出演:ライアン・クワンテン エイミー・スマート
ジャンル読みしにくい点がいい
「THE JUON/呪怨」でハリウッドを制した清水崇監督の新作は、旅客機を舞台にしたシチュエーションスリラーである。もっとも、清水監督のことだから単なるパニックムービーにはなるまいと警戒しつつ、私たちは彼の敷いたお化け屋敷へのレールを進むことになる。
ロサンゼルス発東京行きの旅客機の中には、どこかクセのある乗客が乗っている。そんな不穏な空気の中、機体が乱気流に巻き込まれたことをきっかけに、次々と奇妙な事件が巻き起こる。
夜便とはいえ、こんな飛行機あるのかねと思わせるほどに機内照明が暗くて不気味である。離陸時からその調子だから、どこかホラーっぽさを感じさせる。この監督らしさといってもいい。
そこからしばらくは、乗客の突然死など普通のパニック映画かスリラーっぽい現実味を失わずに映画は進行する。観客は、これがどういったジャンルなのか、この時点ではまだ読み切れない。
余談だが、ここで最初の死体を演じる役者の演技がうますぎて驚いた。清水監督の適切な演技指導のたまものだろうか。あんなにリアルに死体を演じられるというのも、なかなか難しい気がするが。
さて、普通にちょっとこわいパニック作が、ガラリと変貌を遂げるのは中盤以降に起こるおかしな出来事から。観客はいよいよ翻弄される、もしかしてこれはオカルトなのか? いやしかし……。
全体的なチープ風味さえ我慢できれば、怖さの表現などは一級品だし、最後までネタが割れないミステリーを楽しめる。
真相はどこか日本的な価値観を感じさせるもので、異国で自分のバックボーンをしっかり見せる映画作りを続けるこの監督を思わず応援したくなる、好感度の高い一本。
機内の暗さについて言及したのは、こういうオチならむしろ序盤は明るい方がなお落差がでてよかっただろうと思うからだ。最初から非現実的な異空間を感じさせると、最初からこの映画はなんでもアリだと観客が認識してしまい、せっかくのオチの切れ味が鈍ってしまう。