「バトルヒート」40点(100点満点中)
監督:エカチャイ・ウアクロンタム 出演:ドルフ・ラングレン トニー・ジャー
二人の競演に的を絞れていれば
かつて空手チャンピオンの肩書きをひっさげアクション映画界に殴り込んだドルフ・ラングレンも、気づけばはや57歳。近年のアクションスター再生ブームにのって主演映画が続いているが、タイのガチアクション俳優トニー・ジャーとの競演は、さすがに肉体的にかなり苦しそうだ。
刑事ニック(ドルフ・ラングレン)は、マフィアのボス、ドラゴビッチ(ロン・パールマン)を追い詰めるも逆に家族を殺されてしまう。怒り狂ったニックは殺戮マシーンと化し、タイに渡って復讐を開始するが、そんなニックを現地の刑事トニー(トニー・ジャー)は必死に止めようとする。
往年のファンとしてはちょっとつらい部分であるが、トニーが手加減しているようにしか見えない対戦場面、とくにスピードの違いは歴然である。ラングレンは巨大な体と無骨な顔つきから想像される打たれ強さだけは表現できているものの、かつてのキレ味を知るものとしては、できればもう少し早くこの二人の顔合わせが実現していれば、と思わざるを得ない。
脚本家はこの二つの看板を生かすため、わざわざ二度の直接対決を用意したが、ごく普通の格闘場面であり、できればもう少し互いの得意、長所をぶつけ合う演出ができればよかった。
内容は、毎年数千万人ともいわれる人身売買が主題。二人の初競演アクション映画というふれこみからは予想もできない知性的な社会派を目指したもので、これがまた見事に消化不良。
やはりここは、ガチに動ける二人をどう映せば二人とも最高に格好良く見えるか、ファンが喜ぶか。そこを徹底的に実現した上で、どうしてもやりたいなら味付け程度に社会派ふりかけをまぶすやり方が正解であったろう。そこの順番を逆にしたことが、切れ味が鈍った原因といえる。