「ターミネーター:新起動/ジェニシス」85点(100点満点中)
監督:アラン・テイラー 出演:アーノルド・シュワルツェネッガー エミリア・クラーク

テーマ曲からアドレナリン全開

映画界はリブート花盛りだが、ターミネーターシリーズ5作目にして新三部作の一作目となる「ターミネーター:新起動/ジェニシス」はすごい。なにしろ3作目と4作目をほとんど無かったことにして、事実上の3作目となる形の超変化球型リブートを果たしてしまったのだから。

2029年、ついにスカイネットとの戦いに勝利したジョン・コナー(ジェイソン・クラーク)。だが機械軍は敗北の直前、T-800型ターミネーター(アーノルド・シュワルツェネッガー)を1984年に送り込み、ジョンの母親サラ(エミリア・クラーク)を抹殺しようと試みていた。ジョンは急きょ追撃に部下のカイル・リース(ジェイ・コートニー)を送り込むことを決めるが……。

おやおや、ストーリーを見るとまさにパート1の前日譚である。この後、懐かしい全裸の登場シーンを経てアーノルド・シュワルツェネッガー演じるT-800はバイカー3人組に近づいていく、既視感たっぷりの映像が始まるが……。

そこから先はあえて言うまい。「ターミネーター:新起動/ジェニシス」は、名作の誉れ高いパート1、そしてパート2を愛するファンへの最高の贈り物。あの2本を見た人がこのあとの展開を見たら、アドレナリン全開。手に汗握る怒涛のストーリーに歓喜することになるだろう。

3Dが効果的に使われているので映画館ではぜひ3Dを選択したいところ。アクションはよくできているし、このために半年間一日3時間のウェイトトレーニングを続けて体作りをきわめたアーノルド・シュワルツェネッガーも、素晴らしいパフォーマンスを見せる。

なにしろ戦いの法則がシンプルなのがいい。すべては勝機をにぎる拳を相手にぶつけられるか否か。これぞT-800にもっとも似合う、ガチンコパンチ一発勝負である。

最後の敵との対決シーンでは、T-800がメッセージを残す相手との1における関係性を考えたら、シリーズファンなら感動で涙を流すこと確実の見せ場が用意されている。かつて大根役者と揶揄されたシュワルツェネッガーも、人の心を動かすいい表情を見せる役者になった。と同時に、このシリーズにはキャメロン以上に彼が必要不可欠な存在であったこと、彼のスター映画であったことを痛感させられた。アーノルド・シュワルツェネッガーなしにターミネーターを続けてもきっと無意味であろう。

職人に徹したアラン・テイラー監督はじめ、作り手がそうしたことをよく理解していたのが本作成功の要因といえる。3以降迷走を続けたシリーズも、ようやく完全なる着地点を得た。

タイムスリップを繰り返すストーリーは一見ややこしいようだが、日本人は幼少期から「ドラえもん」でこの手の話に慣れているから余裕でついていけるだろう。ありがとうドラえもん。

ハリウッド映画において、"作ると必ず人類の敵になる人工知能"といったワンパターンぶりは別にしても、よくよく考えてみるとあまり必然性のなさそうなスリップがあったり、そもそもほかに方法あるだろうと突っ込みどころは満載だが、細かいことは気にするな精神で挑むだけの価値はある。何しろ情熱のこもった熱い作品だから、ここは目の前のシュワ67歳の渾身の演技に興奮して楽しんだものの勝ちだ。

唯一の注意点としては、公式サイトにあるほぼすべての動画・映像、映画館で流れる予告編。またそうしたものを元に書かれた映画紹介記事等々で、深刻なネタバレが連発している事だ。あなたがターミネーターシリーズのファンならば、当サイト「超映画批評」以外は一切見聞きせず、早めに映画館に行く以外に回避法はない。

とくに、ジェームズ・キャメロンによる解説として出回っている映像がひどい。嫉妬のあまりお前は作品をぶち壊しにする気かと、思わず尻を蹴飛ばしたくなるようなネタバレ全開状態である。

これをマスコミ向け完成披露試写会の上映直前に流すのだから、映画会社の人たちもなかなかサディスティックなことをする。そのうち未来からT-800を送り込まれやしないかと、ちょいと心配になる。



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