「トゥモローランド」65点(100点満点中)
監督:ブラッド・バード 出演:ジョージ・クルーニー ラフィー・キャシディ
映画でテロリストを洗脳
「信じれば夢は叶う」と本社の壁に飾ってあるかどうかは知らないが、「トゥモローランド」はそんなディズニーの社是、というべきポリシーを映画化したアドベンチャー作品。
1964年のニューヨーク万博。そこに自分の発明品を携えて向かった少年フランク(トーマス・ロビンソン)はあっけなく門前払いを食らう。だが彼の潜在能力を見抜いた謎の少女アテナ(ラフィー・キャシディ)は、極秘の超文明都市「トゥモローランド」への入り口でもあるウォルト・ディズニーが出展したパビリオン「イッツ・ア・スモール・ワールド」へフランクを誘うのだった。
実写版「シンデレラ」で、女の子向け社是作品は大好評をえているが、ちゃんと彼らは男児向けも用意していた。それがこれだ。
男の子が一番興味を持つであろうディズニーランドのアトラクションエリア「トゥモローランド」を映画化した本作は、過去の天才たちがひそかに科学技術を駆使した理想都市を建設していましたよ、という物語。そこのピンチを主人公が救う、という勇者物語にもなっている。RPGに親しむ男の子にはすんなりくるストーリーであろう。
発明品を果敢に万博にもっていく序盤のシークエンスなど、本当はサイエンス好きの小学生低学年にみせてやりたい内容も含まれるが、世界観の説明が言葉足らずで登場人物も入り組んでおり非常にわかりにくい。もっとシンプルに見せられなかったものか。
未来世界はぷかぷかと空中に浮かぶプールなど見た目におもしろい部分もあるが、それ以上に64年の万博シーンなど過去の表現に感心する。資料が十分にある近い過去をハリウッドの技術と資金力で映像にすると、これほどのものができる。うらやましい限り。
そばかす少女とジョージ・クルーニーの恋はせつないうえになかなか色気を感じさせる。観客である子供たちの恋のお手本にはぴったりな素材。さすがは世界一セクシーな男。○○○○でさえホの字になってしまう。
ぐうの音も出ない正論をふりかざし、偽善だろうが突き詰めていけば世界を変えられる、との力強いメッセージは、さすが社是そのものだけあって自信満々。
私のような心汚れた大人であっても、おもわずその理想論にぐらっと引かれてしまう、そこがディズニームービーのすごいところである。
こうした説得力の理由としては、現実社会へのさりげない暗喩による奥行きの深さがものを言っている。
なにしろディズニーはこの映画で、テロリストの心さえ溶かそうとしている。テロリストを洗脳いや教育する映画。彼らはいよいよ映画で戦争すら終わらせる気なのか。そんなことを考えながら、大人のみなさんはこいつを見てみてほしい。