「脳内ポイズンベリー」70点(100点満点中)
監督:佐藤祐市 出演:真木よう子 西島秀俊

まるで舞台劇のような面白さ

よくできた舞台劇のような映画「脳内ポイズンベリー」は、恋愛ものでありながら主人公の悩める女子に男性でもたやすく共感できる、上手な作りになっている。

携帯小説家のいちこ(真木よう子)は、飲み会で出会って気になっていた早乙女(古川雄輝)を偶然駅で発見する。はたして声をかけるべきか否か。そのとき彼女の脳内では、議長の吉田(西島秀俊)を中心に、強気派とやめるべき派の間で激しい議論が巻き起こっていた。

女の子の脳内でさまざまな個性と役割を持ったキャラクターがあれこれ会議を繰り広げるアイデアが売りのコメディドラマ。なるほど、男性でもいろいろな思惑がぶつかって、なかなか決断できないときがある。そんなとき脳内ではこんなグダグダ会議が行われているよと、そういうことを言っているわけで、思わず共感してしまう。

とくにいちこの中では強気派が常に少数派のようで、引っ込み思案で優柔不断な彼女の性格は、どうやらその脳内派閥の力関係によるもののようである。

この脳内会議がすこぶる面白く、ネガティブ担当の吉田羊、ポジティブ担当の神木隆之介などことごとく演技がはまっている。「せっかくだから声をかけよう」「いい年してみっともない、がっついてると思われ恥をかくだけ」など、その言い合いは女子ならずとも見に覚えがありすぎるはず。そして結局、無難な結論に達するときなど思わず笑ってしまう。そんなシーンが続出する。

単なる恋のお悩みも、こうした見せ方をすればエンターテイメントになる。面白いアイデアである。

一方、問題なのはその入れ物たる主人公いちこを演じる真木よう子。彼女だけはちょいとミスキャストな感じがする。

演技力こそ申し分ないが、無名時代ならともかく今の彼女には強い女オーラがつきまとっていて、こういう優柔不断な性格を演じるには邪魔になる。

どこかメンヘラ気味でモテない女、ってなキャラを演じるにはあまりに美人すぎるし、おっぱいも大きすぎる。ここは榮倉奈々あたりに演じてもらえれば本当はよかったと思う。念のためいうが、別に榮倉に恨みはない。

原色のファッションは似合わないから外見からして芝居じみて見えるし、そもそもお前一児の母じゃねーかとの脳内ヴォイスが鳴り響いてしまう。真木の女優としてのイメージが、せっかくの意外性ある感動的なエンディングに水を差す。

とはいえ、撮り側はそうしたこともすべてわかっているようで、その分観客サービスに抜かりはない。階段駆け下りシーンにおけるのスローモーションGカップ踊りや、モザイクつき全裸着替えなど、笑いとお色気を融合したアイデアにも舌を巻く。

これらを堂々と演じていることからわかるとおり、真木はプロ意識の高い女優。だから対する男優側もあのように遠慮がちな演技ではむしろ失礼だと知らねばならない。ここは堂々と、Gカップの重量感を観客に伝えるような正々堂々たるダイナミック揉みをするべきであったと、最後にどうしようもないアドバイスをして本稿を終える。



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