「フォーカス」60点(100点満点中)
監督:グレン・フィカーラ 出演:ウィル・スミス マーゴット・ロビー

映画に騙される面白さ

世界一のスリと称される本物の詐欺師が監修しただけあって、「フォーカス」の犯行手口のディテールは興味深い。

だが終わってみれば、むしろこの映画全体にうまくだまされていただけだなと気づく。ある意味壮大な詐欺映画だった点には感服せざるを得ない。

美人だが経験不足の詐欺師ジェス(マーゴット・ロビー)は、今日もバーでカモを探して美人局にひっかけようと企んでいた。だが彼女が声をかけたのは、よりにもよって超一流の詐欺師ニッキー(ウィル・スミス)だった。

オチにしても手口にしても、どう考えてもこの映画、無理がありすぎるのだが、見ている間はあまり感じさせない。これも人の心理を利用した、ある種のトリックということもできる。

劇中ウィル・スミス詐欺師は、スリのコツは対象の注意を逸らすことだと語っているがまさにそれ。ウィル・スミスのような注目度の高いスターがスクリーンに登場すると、その一挙手一投足に翻弄され、これほど荒っぽい脚本でもそこそこ楽しめてしまう。にんげん、うまくフォーカスをずらすことができればさかなクンだってウィル・スミスに見える。

そんなわけで本作のクライマックスは、そこで明らかになる意外な人間関係とか、彼らの作戦とかプランBとか、隅から隅までデタラメなのだが、なんとなく許せてしまう。

もっとも前半の見せ場である中国人大富豪とのギャンブル勝負などは、緊迫感も出てるしよくできている。ここもちょっと考えると無茶苦茶な設定だったりするが、はたまた許せてしまったりする。

かようにつっこみどころ満載のコンゲーム映画というのも珍しいが、結局のところウィル・スミスの笑顔と年齢不相応な肉体美にごまかされてしまう。

あふれるマンガ感を、こうやって力技で消してしまうのもスターの実力かと、なんとなく納得させられてしまうのも詐欺師の実力というやつか。



連絡は前田有一(webmaster@maeda-y.com 映画批評家)まで
©2003 by Yuichi Maeda. All rights reserved.