「THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦」40点(100点満点中)
監督:押井守 出演:筧利夫 真野恵里菜
ごまかし切れない予算不足
私のように本編を知る者が「THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦」の予告編を見ると、映画作りにおいて予算というものは大事なのだなと改めて痛感させられる。
リストラ寸前でレイバーも長らく動かす機会のない警視庁特車二課パトレイバー中隊。だが自衛隊の光学迷彩ヘリ「改グレイゴースト」がテロリストに強奪され、隊長の後藤田(筧利夫)は色めき立つ。自衛隊も警察も翻弄される完全武装のヘリに、果たしてレイバーは有効打を与えることができるのだろうか。
アニメ界の重鎮として名をとどろかす押井守監督が、自身の代表作を実写化する。早くから期待を一身に集めていた「THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦」。だがふたを開けてみれば、そんな話題作でも予算不足丸出しの、痛々しい出来映えであった。
たとえば予告編では東京都庁が爆撃されるショットなど、スケール感あふれるアクション大作のごときだが、本作にそういうものを期待すると大変なことになる。
実際は、等身大セットも話題になったレイバーの活躍するシークエンスはほぼ一つだけ。時間も短く、動く機体も少ない。とてつもない淋しさである。劇中でそれをいかに言い訳されても、見ているほうには「ああ、製作費不足ね」とつっこまれてしまうであろう惨状である。
それ以外は、CGヘリコプターが東京の空をバラバラと遊覧飛行のように飛び回り、モデルガン丸出しなド派手銃器をもった若者たちがドンパチ撃ち合う。ガンマニアが撮ったYouTube映像のごときアクションシーンがつなぎのように散見されるのみ。
アニメ版のようにとまではいわないが、せめてあの緊迫感とリアリティある対テロシミュレーション要素を味わえる、腰の重いエンターテイメントを見たかった、というのが正直なところ。そのくらいでなければ、アニメ版2作目を参考文献にあげた官邸ドローン犯も泣くというものだ。
テロの目的も説得力がなく、自衛隊有数のパイロットのくせに自由気ままに光学迷彩をオンオフしたりと、お前は発見・迎撃されたいのかと説教したくなるようなマンガチック。こういう演出が必要ならば、その理由を適時説明しておいたほうがいいと思う。
官邸にドローンが土を抱えて落ちるだけのしょぼくれたニュースのほうが、はるかに不気味で想像力をかき立てるというのは、なんでもできるフィクションとしては、ちょっと恰好が悪すぎる。
もっとも押井監督ほどの人物である。予算以外にも、自衛隊の協力を得た代償となるなにがしかの制限など、自由にできない事情があったことだろう。だが、それを跳ね返すだけのウルトラCを期待してしまうのがファンというもの。総合的に見れば、もう少し何とかならなかったのかと思ってしまうのである。