「ドラゴンボールZ 復活の「F」」55点(100点満点中)
監督:山室直儀 声の出演:野沢雅子 中尾隆聖

インフレ一段落

17年ぶりに復活した劇場版前作「DRAGON BALL Z 神と神」(13年)が、興収およそ30億円の大ヒットとなったのを受けて今年も作られたドラゴンボールZ最新作。タイトル通り、人気悪役フリーザが復活する。

フリーザの復活を狙うフリーザ軍の残党ソルベとタゴマは、ドラゴンボールを擁する地球へと向かっていた。おりしも孫悟空(声:野沢雅子)とベジータ(声:堀川りょう)は破壊神ビルスの付き人ウイスのもとで修行中で留守であった。

ドラゴンボールと言えば、アベノミクスがうらやむほどの敵インフレ路線を堂々と突き進む、まさに週刊少年ジャンプイズム最強の具現者である。

だが、さすがに前作で作品世界をゆるがすほどのハイパーインフレキャラを登場させたためそちらは一段落。この新作ではすでにランク付けがすんでいる、今更感まるだしのフリーザを再登場させてきた。

もっとも、スーパーサイヤ人ゴッドなる最強形態になった悟空に今更フリーザごときの出る幕はないわけで、そこはなるほどな設定によって彼も同等レベルにパワーアップしているというお約束な展開。

その後は相変わらずの流れで、もはや特段のコメントはないとしかいいようのない話。どうして日本のマンガ映画はこうなってしまうのか。

なんといっても前作は原作者の鳥山明が、ハリウッド実写版への不満を解消するために作り出したという「理由」があった。だが、本作には二匹目のどじょう以外の理由が見当たらない。そうした「動機」の弱さによって、真剣味が薄れた点は否定できないのではないか。

ただ唯一いい点は、これは映画なので少なくとも94分間座っていればちゃんと悟空とフリーザの戦いの結末までみられるということである。

これがもし、連続テレビアニメ枠でやっていたら、きっと20話くらいはひっぱられることだろう。前座の悟飯戦だけでも7話くらいはやるに違いない。そう考えると劇場版さまさま、であり、そこに1800円を投じる価値があるかどうかが鑑賞の判断の分かれ目となるだろう。



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