「プリデスティネーション」65点(100点満点中)
監督:マイケル・スピエリッグ ピーター・スピエリッグ 出演:イーサン・ホーク セーラ・スヌーク

時間移動ミステリ

時を超える式のSFというと「バタフライ・エフェクト」(04年)、「オーロラの彼方へ」(00年)など傑作が多い。打率の高さはあらゆるジャンルの中でも相当高い方だろう。まて原作が「宇宙の戦士」「夏への扉」のロバート・A・ハインラインとくれば、いやがうえにも期待が高まる。

70年のニューヨーク。青年ジョン(セーラ・スヌーク)はバーテンダー(イーサン・ホーク)に自らの数奇な半生を語る。するとバーテンは彼の運命を変えた人間への復讐をしないかなどと提案する。バーテンは、未来からある目的でやって来たエージェントだったのだ。

結論からいうと「プリデスティネーション」は、頑張ったのはよくわかるがまだまだ、といったところ。

女優に男キャラを演じさせるなどトリッキーな演出ながら、映像化が難しい原作のトリックをうまく処理したあたり全体のアイデアは悪くない。じっさい真相を見たときは、ええっ、それマジ?! とのけぞることができるはずだ。

とはいえ、見せ方がちょいともたついているのもまた事実。その結果、一回で見切った満足感がないのもよろしくない。とくに日本語字幕版は、テキストが複数位置にかぶっていたりするし、表示時間も短めな部分がいくつか見受けられた。とくに年号などの数値は、一瞬で覚えるのが苦手な人にはやっかいだろう。

それでも筋は追えるものの、食べ残した気分は否めない。細部を相当強靱に作らないといけないシナリオだから、二度三度と見ればきっとよくできてるね、となるのだとは思うが、その欲求が沸いてこない損な作りである。

映画で複雑なトリックやミステリを見せるのはなかなか難しい。人には理解の速度に差があるが、うまいことペースがぴったり合った作品に出会うとたまらないものがある。

そうした視点から「プリデスティネーション」は、日本語版字幕で見るにはちょいとやっかいだな、と感じる一本である。



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