「ジョーカー・ゲーム」9点(100点満点中)
監督:入江悠 出演:亀梨和也 伊勢谷友介
「ルパン三世」実写版の続編気分を味わえる
華々しいキャストの大作アクションだからか「異能の天才たちによる"極限のスパイゲーム"」なんて宣伝が大々的に行われているが、そういうキャッチコピーはやめた方がよいのではないか。
架空の第2次世界大戦を前にした時代。陸軍士官学校で上官をはずみで殺害してしまった男(亀梨和也)は処刑寸前、結城中佐(伊勢谷友介)に救われる。別の名を与えられ、スパイとして鍛えられた彼は、大陸の"魔の都"に派遣され、新型爆弾の設計図を盗むミッションに挑む。
どうしようもないZ級作品を買い付けてしまい、なんとか損失を押さえるべく高い下駄を履かせたり、嘘八百の大げさな惹句で気を引こうという宣伝手法をよく見かける。零細映画会社の苦肉の策で、心優しい映画ファンは文句すら言わないが、それを国内最大手の会社が勝負作でやるのはどうなのか。
スパイアクションに日本独自の頭脳ゲーム要素を加えた究極のスパイゲームだとか、邦画の枠を越えるスケール感あふれる壮大な映像世界とか、中身をみた後にそんなコピーを見せられたらなんてひどいブラックジョークなんだろうと笑うしかない。いや、笑ってすむかどうかはわからないが。
車が爆発しても、高層階から生身で飛び降りてもぴんぴんしているイケメンや美女たちは、確かに邦画どころかハリウッド映画の死亡判定をすら軽く越えるスケール感を体現しているといえなくもない。
とても計算して投げたとは思えないライターが神がかった動きをする、それを日本独自の頭脳映画と言い切るのなら、もはや反論のしようもない。そういう、あらゆる他の映画を凌駕するほどのご都合主義を喜ぶ層がいるとするならば、もしかしたらこの映画もいくらかは楽しめるかもしれない。
外国人俳優たちの異様なまでのオーバーアクト、深田恭子演じるお尻とおっぱいがやたらと重そうなブラックウィドウなど、邦画のスケールを越えた究極のチープさも、許せる人は許せるだろう。
アクション演出は既視感たっぷりな安定の劣化版。本来、自らも優れた作品がやってこそ様になる有名作品へのオマージュの数々も、中二の息子の自由研究を見ているような痛々しさを感じさせる。
絵的な荒唐無稽感は、珍作「ルパン三世」(14年、日)を彷彿とさせ、全ルパンファン(実写版限定)に、予想より早い続編気分をプレゼントしてくれる。
結局のところ、主演のジャニーズスターのファンたる熱烈な女子向けのお気楽作品ということだが、それならそれで「○○ファンにおくる、従来の枠を越えたアイドル映画」くらいの宣伝文句にしてくれれば、こちらとしても正直でよろしいくらいのほめ言葉を贈れたものを。