「ワイルドカード」35点(100点満点中)
監督:サイモン・ウェスト 出演:ジェイソン・ステイサム マイケル・アンガラノ
アクションの切れ味はいいが
これ!といった背骨がないと、映画全体の焦点がぼける。「ワイルドカード」はそれを地でいくような残念作である。
元兵士のニック(ジェイソン・ステイサム)は、ラスベガスで用心棒を生業としていた。あるとき、ひどい暴行を受けた元恋人から復讐を依頼された彼は、しぶしぶながらも引き受ける。だが、その仕事は彼を予想外の形で窮地に追い込むことになるのだった。
あらすじ紹介に悩んだのは、この先のストーリーがどうも予想外に、といっても悪い意味で迷走するように感じられるからである。え、そっち方面いっちゃうの? で、戻ってこないわけ? 的な感じだ。
ジェイソン・ステイサムのアクションは相変わらず切れ味鋭く、撮り方もうまい。編集もテンポいいし、彼の演技じたいも上々。
しかし、この映画がいったいなにをメインディッシュとするかが観客に伝わりにくく、結果、みる側はどこに視点を置けばいいのか迷うことになる。
主人公は元軍人で格闘戦の高いスキルをどうやら持っているが、銃を使わないというマクガイバー的ポリシーが、彼にとってさほどの必然性があるとも思えず、映画的にも効果を上げていない。
ジェイソン・ステイサムのファンからすれば、お前いつも使ってるじゃん、なんで今回だけ使わないのか。と、説明責任を求めたくなるのである。アクションスターの映画というのは、作り手が意図しようがしまいが継続性でもって見られてしまうのだから、そのあたりまで配慮してもらわないと困る。
また、彼のアクションを見る映画、というには量もバリエーションも少ない。数回、同じチンピラと殴りあいをするだけだ。
また、後半明らかになるこうしたキャラクターを演じさせるには、ジェイソン・ステイサムは余りにパーフェクトに強すぎるし、かといってアクションをメインに見せるにはベガスのホテルはこぢんまりし過ぎている。
どちらかにポイントを絞ってくれればまだ突破口は開けたように思うのだが。