「KANO 〜1931海の向こうの甲子園〜」65点(100点満点中)
監督:マー・ジーシアン 出演:永瀬正敏 坂井真紀
親日野球映画
「KANO 〜1931海の向こうの甲子園〜」はまごうかたなき親日映画、それも超がつくような日本マンセー作品である。そんな作品が台湾本国で社会現象的大ヒットを記録したというニュースは、もっと日本で広まっていいことだ。
1929年、日本統治下の台湾。鬼コーチで知られる近藤(永瀬正敏)は、日本人、台湾育ちの漢人、台湾原住民の混成チームである嘉義農林野球部に就任する。厳しいが心のこもった指導に部員たちは食らいつき、弱小だった部はやがて本土の甲子園大会を目指すまでに成長する。
台湾の大作とはいえ予算規模は普通の日本映画と大差ないから、たとえばCGなどVFXの出来などはそこそこだ。普通にみられるものの、時代映画としてさしたる映像的見せ場があるわけではない。
野球映画としても、最初の試合から最後に至るまで全力投球した結果、さほど大事でない試合も時間が長く、メリハリが利いていない。上映開始1時間もたっていないのに、ほとんど決勝戦の演出をやっている。
八田與一(大沢たかお)の登場にもあまり必然性が感じられず、日本人へのサービスなのかと勘ぐってしまうほど。こうしたいたらなさは、監督が役者から転向したばかりのマー・ジーシアンで、その経験不足という点も否めないだろう。
だが、それでも「KANO 〜1931海の向こうの甲子園〜」という映画の純朴さというか、敬愛の情のようなものが観客にダイレクトに伝わってくる点はなかなかいとおしい。
決して完成度が高いとはいえないこの映画を、台湾人が五回、十回、二十回と繰り返し見に行った。それほど愛される理由もわからぬでもない。この映画からは、作り手自身が好きなものを、その理由を伝えたいとの誠実さが感じられるのである。
脚本を選び抜く主演の永瀬正敏に、なぜこのオファーを受けたのか聞いてみたことがある。彼は「アジアが混とんとしているこの時代に、こうした素晴らしい史実があったことを広く伝えたいから」と即答した。また、台湾のスタッフ、そして球児役のキャストたちの礼儀正しさには感服している様子であった。なるほど、撮影が終わるたびに全員整列して挨拶するような現場など日本には、いやどの国にもないだろう。海外の現場をいくつも体験している彼がいうのだから間違いあるまい。
それにしても、日本が一方的に台湾人を導き、ともに勝利をつかもうとする。こういう話に台湾人が素直に涙するということに驚かされる。これではまるで日本は彼らの頼もしく優しい兄で、この映画は日本への尊敬の気持ちそのものではないか。こういう映画は、5000年たっても韓国からは出てこないだろう。
日本人は中韓発の自虐プロパガンダに毒されているので、外国からのこうした態度には慣れていない。だから、あからさまなラブラブ光線を浴びると相当気恥ずかしくなってしまう。
だからこそ、こういう国や映画もあるんだよと、人々に広く伝える事は大事であろうと思うのである。