「オールド・ボーイ」60点(100点満点中)
監督:スパイク・リー 出演:ジョシュ・ブローリン エリザベス・オルセン

すっきり整理されてはいるが

面白いストーリーは、誰しもリメイクしたくなる。ただし、国や場所を変えるだけで、そのストーリーが持つ輝きが鈍ることも、また珍しくない。

1993年。イケイケ状態の広告代理店重役ジョー(ジョシュ・ブローリン)は、致命的な失敗から泥酔。目覚めるとホテルらしき一室に監禁されていた。その監禁生活は、すぐに終わると思っていた。だがジョーの過酷な運命は、まだはじまったばかりなのだった。

韓国の名監督パク・チャヌクの同名作品のリメイクである本作は、舞台をアメリカに変更。それ以外はほとんど韓国版を踏襲している。

具体的には、ハンマー片手に監禁組織をぶち殺していくアクションシーン。このあたりは構図もふくめて韓国版のアイデアををそのまま流用。ほかにもオリジナルをみた方ならば、笑ってしまうような共通点をいくつか見つけられる。スパイク・リー監督よ、いったいどれだけリスペクトしてるんだよと思わずいいたくなるわけだが、できればその韓国版の原作が、日本のマンガであることもたまには思い出してほしいところ。

そんなわけで本作は、韓国版における問題点もそのまま踏襲している。たとえば犯人の犯行方法にはあまりにも金と時間がかかりすぎる上、肝心な部分が運任せという荒っぽさなど。

くわえてこのリメイク版は、ラストも筋運びもすっきりしている分、テンポはいいがリアリティ構築に難があり、結果的に観客の没頭を妨げている。シリアスなのに、いくつか笑ってしまうようなところがあり、ちょいとマイナスである。

結論として、真相解明直後の主人公の表情を始め、あくの強さと不気味さはオリジナルの方が上。よって、韓国版を見た人にはさほど積極的にはすすめない。

もっともこちらの、よく整理されたストーリーの口当たりの良さも、決して悪いということはない。初めて見るなら、こいつから見ても問題はない。



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