「ミッション:15」55点(100点満点中)
監督:マシュー・トンプソン 出演:ジェニファー・モリソン ジョシュ・スチュワート

宣伝が最大の問題

「ミッション:15」の何が一番いけないかといえば、上映開始後45分間も伏せられている重要事項のネタバレを、宣伝効果のために映画会社が連呼している点である。

このジャンルで有名なカルト作のタイトルを宣伝に使いたい気持ちは痛いほど分かる。少しでも周知しないとこの手の小さな映画のビジネスは厳しい。そうした事情は承知しているものの、私は批評家だから申し訳ないが無視する。やはり大事な秘密を事前に伝えてしまっては、観客の楽しみの多くは減ってしまう。

首都ワシントンにある米軍医療施設に、3人のPTSD患者である兵士が通院している。診療の帰り、偶然同じエレベーターに乗り合わせたのは、中東で拷問を受けた女性士官のホワイト(ジェニファー・モリソン)、誤爆のトラウマを持つ無人機操縦士オールズマン(ジョシュ・スチュワート)、仲間を見殺しにせざるを得なかったディエゴ(スティーヴン・ライダー)。3人を乗せた箱は、途中で突然停止。慌てる三人だが、やがて断片的情報からワシントンが核攻撃を受けたらしいことを知る……。

エレベーターシャフトを登るシーンでいかにもワイヤーで吊ってる感がみられるなど、細かい部分のアラが目立つものの、全体的にはよくできたシチュエーションスリラーである。

役柄上、ノーメイクで挑んだジェニファー・モリソンは、34歳とは思えぬ肌の美しさ。つくりも美人とあって、目の保養になることこの上ない。きれいすぎて、どう見ても激しい拷問で傷ついた兵士には見えないが、そこは見なかったことにするほかない。

狭い空間内に3人の軍人。全員メンヘラで一人は超美人。彼女は階級こそ一番上だが、一人の男は何をしでかすかわからない危険な男。

こうした状況下で、放射能による死がまもなく訪れるとなったら、ちっぽけな秩序など一瞬で吹き飛ぶだろう。

さて、どうすりゃいいのか。逃げ場なし、対策なし。そんなデッドロック状態を、娘への愛と比類なき行動力でのりきろうとするヒロイン。次々現れる困難の連続と、狭苦しい舞台装置のおかげで退屈知らずのスリラーだ。なじみ深いエレベーターという舞台も親しみがわく。

精神治療中の軍人というのは新味ある設定だが、そこが展開の意外性とか社会派なテーマにつながっていないのはちと惜しい。全体的に予想の範囲内でストーリーが回るのも、このジャンルにしてはちょっとだけパワー不足な印象だ。



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