「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」70点(100点満点中)
監督:アンソニー・ルッソ 出演:クリス・エヴァンス スカーレット・ヨハンソン

盾で戦う愛国者

同じアメコミ映画でもDCコミック発「ダークナイト」シリーズあたりと比べると、マーベル・シネマティック・ユニバースの諸映画作品は、隠れた社会派テーマのようなものが薄く、大人の観客としては少々物足りない。しかもキャプテン・アメリカは、マッチョスターのハルクやちょいワルオヤジのアイアンマンに比べ、いまいち個性が薄い。文字通り戦中派の愛国者、との設定を生かして、古き良き時代の男ならではの現代批判を織り交ぜていけばおもしろくなりそうのだが、あまりそういう方向性は見られない。

アベンジャーズ結成とその後の死闘から2年がたった。ニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)率いるS.H.I.E.L.D.で働くキャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャース(クリス・エヴァンス)とブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフ(スカーレット・ヨハンソン)だが、スティーブはいまだ現代での生活やS.H.I.E.L.D.の活動になじめない。まして彼らが言う、全人類を監視して犯罪を未然に防ぐ大プロジェクトに対しては、反発すら覚えるのだった。そんな彼の不安はやがて的中し……。

裏テーマに頭をひねる必要がないぶん、豪華なキャストと少年少女向けヒーロー映画の王道を味わえる第二弾。出てくるヒーローは上記3人体制で、いずれもハイテンポなアクションを楽しませてくれる。

期待のアクションシーンは硬質感ある映像で撮られ、ジェイソン・ボーンシリーズを彷彿とさせるリアル志向となっている。とくに主演のクリス・エヴァンスは、今回みっちりパルクールを習得して挑んだと言うとおり、壁を走るようなアクロバティックな見せ場にも挑戦。究極のドーピングマンとフリーランニングの組み合わせは斬新で、次作ではもっと突き詰めていってほしい。

スカーレット・ヨハンソン演じるブラック・ウィドウも、素早く美しい身のこなし。この女優ときたら、年を取るごとにスタイルも顔もきれいになってゆく、まったくもって不思議な存在である。割烹着もびっくり、体内にSTAP細胞でも隠し持っているのだろうか。今回も重いはずの爆乳重量を感じさせない軽やかなスタントで、観客のお父さんたちを喜ばしてくれる。

このほか、ニック・フューリーがおそわれるカーチェイスも、ナイト2000よろしくしゃべりまくるハイテク車の面白さもあって実によくできている。

盾しか持たないのに、その盾で敵をなぎたおす無敵のキャプテンアメリカは、なんだかどこかの国の自衛隊のようだ。防衛力も極めれば攻撃力となる。その力で今回彼が挑むのは、究極の管理社会=システムだ。

新キャラや次キャラも登場し、原作ファンの心をも刺激する。全方位的に平均をこえた出来映えの「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」を、ぜひファミリーでお楽しみあれ。



連絡は前田有一(webmaster@maeda-y.com 映画批評家)まで
©2003 by Yuichi Maeda. All rights reserved.