「武器人間」70点(100点満点中)
監督:リチャード・ラーフォースト 出演:カレル・ローデン ジョシュア・サッセ
ドラえもんもびっくり
ニコニコ動画で5万回再生された予告編が大人気の「武器人間」は、大山のぶ代ナレーションによる予告編の爆笑ぶりとは裏腹に、ガチの怖さが魅力のカルトムービーである。
1945年、大戦末期の東部戦線。ソ連のある偵察部隊は、敷地内に死体の山がある怪しげな修道院に目を付ける。さっそく中に入ってみるがそれが彼らの運のつき。ここはナチスで異常な研究をしていた博士(カレル・ローデン)が、武器人間を実用化すべく研究していた秘密の施設だったのだ。
屈強なソ連兵vs.武器人間。恐怖の館からの脱出を図るサバイバルアクションホラー。ソ連軍が記録したフィルムという体裁をとっている、いわゆるモキュメンタリーでありPOV映画(主観映像)でもある。相当あくの強い一本といえるだろう。
欧州、とくにドイツでは撮影用の衣装であってもハーケンクロイツを街中で見せたら違法という、それほどタブーな素材であるナチスドイツ。しかし同時に、こういうおバカ系オカルトネタの定番でもある。ナチスの科学力は世界一ィィ! ということで日本のサブカルファンにもなじみが深い。
だが、死体とそこいらへんのガラクタを縫い合わせて動かすという本作のキチガイじみたアイデアには思わず閉口する。しかも出てくる武器人間のビジュアルが、博士渾身の研究というよりは単なるやっつけ仕事そのものときた。監督によるデザインということだが、これがどこか狂気を感じさせる。
そんなわけで殺人マシーンこと武器人間には基本的に量産型はなく、どれも職人の手による一品ものオーダーメイド。顔がプロペラになっているとか、ジャンクマンも真っ青の発想で思わず笑いが出そうなものだが、ショックシーンや恐怖シーンがあえてシリアス志向なので実際はかなり怖い。
オランダのリチャード・ラーフォースト監督のもと、このいかれた造形の実現化を担当したのは「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズにも参加した特殊効果のスペシャリスト、ロジェ・サミュエルズ。かわいいホビット作っていたと思ったら次はプロペラ人間。この仕事を続けるのも大変である。
終盤には観客が一番みたかったものをしっかり紹介してくれる親切な展開。ラストの皮肉も効いている。
そこから政治的な未来を想像するもよし。ある意味、人類史上に残る業績をのこした博士の美的センスの無さに、ああデザインてのは大事なんだなあと改めてビジネス的教訓をえるもよし。
いろいろと感じ入るものが多い、意外な掘り出し物である。