「コールド・ウォー 香港警察 二つの正義」65点(100点満点中)
監督:リョン・ロクマン 出演:アーロン・クォック レオン・カーフェイ
華やかな一般向けアクション映画
香港映画としては大作の部類に入る10億円の製作費、アーロン・クォックとレオン・カーフェイという2大スターを中心とした華やかなキャスト陣。「コールド・ウォー 香港警察 二つの正義」は、(香港人にとってはとくに)分かりやすいルックスのエンターテイメントである。
繁華街モンコックで爆破事件がおこり、かけつけた特殊部隊員らが車両ごと拉致される事件が香港警察を揺るがしている。ところが副長官のリー(レオン・カーフェイ)とラウ(アーロン・クォック)は、捜査の方向性をめぐって対立。とくに被害者の中に息子が含まれるリーの、職権乱用ともいうべき暴走ぶりを、ラウは激しく批判するのだが……。
本作は、ハンサムなおっさん二人のよくできたハードボイルド。日本での知名度は多少落ちるが、それでもこれをみれば、二人のスターに思い切り感情移入して楽しむのが正しいやり方だとわかるだろう。
登場人物はよく描き分けられているし、ストーリーも分かりやすい。誘拐アクションだと思っていたものが、二人の長官候補の権力争い、主導権争いになり、汚職事件へと転調してゆく。何度も色を変えて花が開く、幕の内弁当式の脚本である。
ユニークなのは、権力争いをする二人が、経済的効率優先派と、現場の声重視派という対立軸になっている点。はたして治安とは、どういう形で守るのがよいのか。この映画が広く香港、そして大陸で支持されたことを考えると、そこに中華圏の価値観が見て取れる。
映画としてはごく普通の大衆向け刑事ドラマで、本場だけあってアクションの切れもいい。BMWが疾走する序盤のカーアクションから、すでに非凡さを見て取れるだろう。
身代金を副長官みずからが運び、犯人の指示通り移動しまくるシークエンスもこの手のジャンルの王道で、緊迫感を感じられる。ちなみに高速道路における見せ場は、実際に道路を建設して撮影したという。そこまでやるか。
驚愕の二転三転とオチが売り物の一つになっているが、キャラクターの実在感に比べるとこの真相は荒唐無稽さが気になる。高速道路建設以上に、いくらなんでもそこまでやるかね、と感じてしまう。
とはいえ、考えてみると今の日本政府ってのは、もしかするとこんな状態なんじゃねーのと感じてしまったりもするわけで。映画の荒唐無稽があてはまりそうな国というのもなんだか脱力、というわけである。