「世界にひとつのプレイブック」60点(100点満点中)
Silver Linings Playbook 2013年2月22日(金)TOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館他全国順次ロードショー 2012年/アメリカ/カラー/122分/配給:ギャガ
監督・脚本:デヴィット・O・ラッセル『ファイター』 原作:マシュー・クイック「The Silver Linings Playbook」 出演:ブラッドリー・クーパー ジェニファー・ローレンス ロバート・デ・ニーロ
ジャッキー・ウィーヴァー クリス・タッカー
再出発と癒しのメッセージ
躁鬱気質の女の子というのは厄介なもので、美人だったり、かわいらしいところがあったりと一見魅力的である。男としては、下手にはまると身を亡ぼすことになるわけだが「世界にひとつのプレイブック」を見ると、こうした男女関係の基本的常識というのはもしかして万国共通なのか、とうならされる。
妻に浮気され心が壊れたパット(ブラッドリー・クーパー)は、教職も住むところも失い両親のもとで療養中。だが、それでも妻を愛しなんとか元サヤを狙っている。そんな折、親友の奥さんの妹ティファニー(ジェニファー・ローレンス)と知り合うが、彼女も夫を亡くしたばかりで精神を病んでいた。奇妙なところで共通項を見出した二人だが、さっそく意気投合というわけにはいかず……。
この映画のヒロインティファニーは、美人なうえに巨乳であり、ルックスは男なら思わず視線が行ってしまうレベル。だが、行動は完全にメンヘラなそれ。寂しさとかなしみを紛らわすため、会社の同僚全員と寝てしまうような女である。
正常な感覚では、原因とその行動はどう考えても不一致なのだが、こういう女性の場合はそうではない。たとえば、彼氏とけんかすると、すぐに合コンに行ったり男友達にLINEを送り始めたりする女性は決して少なくない。元来寂しがりやなので、孤独に耐えられない彼女たちは、こういう時のために便利な男達を複数キープしている。考えようによっては、情が厚く、純粋で、かつ危機管理能力の高い優秀な才能と言えなくもない。無理してそんな風に考えている意味が我ながらよくわからないが。
それにしても、病んでる同士の恋愛ドラマがこれほど全米で支持を得て、アカデミー賞の演技部門全ノミネートというとんでもない快挙を達成してしまうのだから、世も末というかなんというか。
いや、作品じたいは大変優れたドラマなのだが、基本テーマが人生の立て直しというか、再出発と癒しの過程を描いたもので、それに共感できる人がこれほど多いというのがやや意外だったという意味である。
恋愛のトラウマが、新たな出会いと体を動かしホルモンバランスを良くすることで快方に向かうというプロットは、医学的にも理に適っている。
今をときめくジェニファー・ローレンス演じるおかしなヒロインが、見た目の突飛さとは裏腹に実はきわめて正しいことをやっているというのも、ひねりがあって面白い。
冒頭のタイプの女の子には、すべてを理解し、赦し、受け入れてやるのが一番の特効薬。それを知る恋愛巧者の男性にしてみれば、この映画はいろいろと合点がいくだろうし、クライマックスには深い感動があるだろう。むろん、そうした女の子自身にとってもしかり、である。そうした幸せなカップルにはなかなかの1本だ。
もっとも、本作の楽観主義がはたして現実的かどうかについては、あえてコメントを避けさせていただこう。