「るろうに剣心」55点(100点満点中)
2012年8月25日(土)全国ロードショー 2012年/日本/カラー/2時間14分/配給:ワーナー・ブラザース映画
原作:和月伸宏「るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-」 監督:大友啓史 脚本:藤井清美、大友啓史 音楽:佐藤直紀 キャスト:佐藤健 武井咲 吉川晃司 青木崇高 須藤元気
豪華コスプレ劇
原稿を書き上げておきながらアップロードが遅れたせいで、渾身の書き出しを全部削除することほどむなしいものはない。ともあれ本作も公開後、かなり時間がたっているので速やかに本題に入ろう。
幕末の戦場で「人斬り抜刀斎」と恐れられた剣客、緋村剣心(佐藤健)は、しかし新しい時代の訪れとともに殺さずの誓いをたて、逆刃刀を腰に旅を続けていた。そんな折、神谷道場の若き師範代、薫(武井咲)を助けたことで、彼はそこに居候することになる。
5000万部突破の大ヒットコミック、待望の実写映画化である。しかし真っ先に思うのは、なぜ今ごろになってコイツを実写映画化するのかという点。その納得いく理由を描いてくれなければ、10年前でもよかったじゃんという事になってしまう。
私が映画を見た限り、残念ながらその解答は得られなかったが、制作側によれば「緋村剣心を演じられる男=佐藤健がようやく見つかったから」ということらしい。泥酔した細身の女の子ひとり満足に抱き上げられない貧弱な男が幕末有数の剣豪とは恐れ入るが、女性のように華奢な剣士というのがこのキャラの本分なのであながち間違ってはいない。
なお、最大の売りものであるソードアクションはなかなか良い。谷垣演出(アクション監督=谷垣健治)らしい香港風味は、カッコ重視で見栄えがする。リアリティは薄いものの、邦画ではなかなか見られないスピード感がある。非現実的すぎると心配された斬馬刀(相楽左之助愛用の巨大武器)のそれも、ギリギリ許せる範囲に収めたのは感心した。
ただ何よりこの映画で驚かされるのは、キャラクターの外見であった。これはもう、漫画のイメージそのもの。本作を一言で言い表すとすれば、お金をかけたコスプレ(演劇用語に非ず)劇。泥酔女子のスカートを押さえきれなくても、佐藤健が緋村剣心に最も近い俳優であることを私も認めざるを得ない。
脇役の中では、須藤元気がなかなか良い演技を見せる。彼はプロの格闘家だが、アクションにおいて自分より技量の低い相手と絡む際にも、力のバランスが崩れて見えぬよう配慮している。これも重要な演技力といってよいだろう。
その他のキャラクターは、短時間の中で立たせるまでには至っていないが、時代劇に多くを望まない若者にはこれで十分ということか。主要なキャストの再現性と佐藤健の魅力で十分という方に向いている作品といえる。