「4.3.2.1」55点(100点満点中)
4.3.2.1 2012年7月28日より、ヒューマントラストシネマ渋谷にてレイトショー公開! 2010年/イギリス/カラー/117分/配給:アットエンタテインメント
監督・脚本・製作:ノエル・クラーク 監督・編集・製作:マーク・デイヴィス 製作:デイモン・ブライアン キャスト:エマ・ロバーツ オフィリア・ラヴィボンド タムシン・エガートン シャニカ・ウォーレン=マークランド ノエル・クラーク
レイトショーにはいい感じだが
同じ映画鑑賞でもレイトショーにおける期待というのはちょっぴり他と異なる。残業で遅くなった男性や、デートで少し飲んだカップルなどがその途中で立ち寄る。そんな気軽さというものがレイトショー鑑賞にはある。
何人もの美女がロンドンとニューヨークの街をかけ巡るお気楽なサスペンスは、そうした用途にピッタリではないかと期待しつつ「4.3.2.1」を鑑賞した。
シャノン(オフィリア・ラヴィボンド)は家庭内環境の悪化に耐えかね、衝動的に自殺を考えている。いままさに飛び降りようというそのとき、彼女の手にはなぜか大量のダイヤモンドが握られていた。次の瞬間、シャノンの3人の女友達が現場に到着。いったいなぜ今夜はこんなコトになってしまったのか。4人それぞれの、複雑に絡み合った謎解きの物語がいま始まる。
この映画に出てくる4人のヒロインには、アメリカの映画専門サイトが「最も美しい顔100」に選んだという、いわばキモオタ選りすぐりの美女が3人も含まれている。お気楽なレイトショーで楽しむには、申し分のない布陣である。
実際彼女たちはそれぞれ魅力的で、美人でスタイルもいい。そして若い。小さい子もいりゃ大きい子もいる。どんな好みもまとめて面倒見ますよという、4人百貨店方式である。
ただし、せっかく個性が異なる4人をそろえながらもそれが脚本に反映されるわけではない。妙に生々しいタッチのティーンエイジャー実録ドラマ風ではあるものの、それ以上の味わいがない。
4人の女のコそれぞれの同じ週末を4回繰り返すと、すべての謎が解け全体像が見えてくるというテクニカルな構成だが、それをそこそこスタイリッシュ風映像でまとめたいかにもイギリスの低予算ドラマだ。
俳優業の方が有名なノエル・クラーク監督(「ドクター・フー (シーズン1&2)」ミッキー・スミス役)の不慣れさもあってか、特段意外性も教訓も感じられない。脚本をこねくりましたものの、不十分な完成度のまま仕上げてしまいましたと、そんな感じである。
ある日の物語を重層的に幾度も繰り返すことで謎が解けていくパターンはよくあるが、それ自体は面白さとは無関係。そのトリッキーな構成の特徴を、どう利用すれば面白くなるかを監督脚本家は考えなくてはならない。
また一般に、語り口の複雑さは痛快さをスポイルする。ヒロインの1人がやたらと格闘戦に強いというせっかくの伏線も生かされておらず、完成度の低さを感じさせてしまう原因のひとつだが、これなど脚本こねくりに気を取られて作り手が忘れてしまったんではないかと思うほどだ。話を複雑にした結果、自分が混乱してどうするのか。
半分酔っぱらったレイトショー観客の頭には、もう少し単純でもいいからこの美女たちの個性を生かしたものが合っただろうと思う。もっともそんな日本の事情をくみ取って作ったわけではないわけだが。
美人を出すならワンセットにすべき肝心の裸も少なく残念だが、映画史上最速の処女喪失シーンという、だれが喜ぶのかよくわからない風変わりな場面は楽しめる。
全体的に、狙いすぎ工夫しすぎが裏目に出てしまった作り手の力不足を感じる。あと一つか二つ、ぱっと輝く特長があればよかったのだが。