「ミッシング ID」65点(100点満点中)
Abduction 2012年6月1日(金)丸の内ピカデリー他全国ロードショー 2011年/アメリカ/カラー/106分/配給:ギャガ
監督:ジョン・シングルトン『ワイルド・スピードX2』 製作:パット・クロウリー『ボーン』シリーズ キャスト:テイラー・ロートナー リリー・コリンズ アルフレッド・モリナ シガーニー・ウィーヴァー

この高校生、マッチョすぎ

『トワイライト』シリーズで、ヒロインを寝取ろうと頑張る狼男を演じたテイラー・ロートナーの主演最新作。中身は『トワイライト』シリーズを男の子向きにしたような、俗にいう中二病的な内容だが、そんなイタ恥ずかしい内容でも沢山のお金といい俳優をそろえれば、何とか見られる形になる事がよくわかる一品である。

パーティーで羽目を外すのが好きな、ある意味平凡な高校生ネイサン(テイラー・ロートナー)は、意外なウェブサイトで自分の少年時代の写真を発見する。それは、誘拐され消息不明の子供たちの画像を集めたサイト。だが自分には優しい両親もいる──。それでも疑念を払拭できぬネイサンは、独自に過去を調べてゆくうち、悲惨な事件に巻き込まれる。その場にいた気になるクラスメート、カレン(リリー・コリンズ)を連れ、逃亡するはめになったネイサンを待ち受ける衝撃の真実とは……。

自分の正体は何なのか──?

実は自分が橋の下で拾われてきた子供、なんていうのは誰もが一度は妄想するものであるが、それをつき詰めてしまったのがこの映画。父親や母親が教えてくれた奇妙な遊びの数々は、屈強なスーパースパイに育てるべく知らず知らず行われていた訓練であった。男の子であれば誰もがわくわくする空想設定だが、普通は間違ってもそんなものを映画にしようとは考えない。

そんな恥ずかしアクション映画を大ヒット作の次の出演作に選ぶのだから、テイラー・ロートナーのセルフプロデュースの方向性ははっきりしている。じじつ本作は、『トワイライト』ファン層にもぴったりのカップル映画となっている。

偶然居合わせた初恋の女のコと逃亡デートを繰り広げる主人公だが、その途中ではおそらく30代の女のコいや女性客に向け、マッチョな肉体を見せつける場面もあるなど、ツボは外さない。

激しい追跡をかわしながら逃げまくるこの2人、じつは中学時代に一度いい仲になりかけた過去が途中で明かされたりするが、正直そんなことはどうでもいいの一語に尽きる。ラブコメ好きのティーンエイジャー向けのファンサービスだろうが、我々おっさんにはそんな甘酸っぱいラブラブ要素は不要である。そもそもオッサン客じたいがこの映画興行に不要だという話もあるが、ここでは無視する。

テイラー・ロートナーは、空手の元ジュニアチャンピオンということで格闘シーンは本格的。父親と喧嘩じみた格闘練習をする場面があるが、ここで観客は「この動き……コイツ、できる!」と思うことになろう。

パルクールの見せ場は初挑戦という事だが、こちらは少々体が重そう。とはいえスタントのほとんどを自分でこなしているというのだから感心する。いつ狼男に変身するんだろうとハラハラするものの、アクションシーンは概ね合格、平均以上といえる。

特筆すべきスタントは特にないし、ストーリーも設定もありがちな印象だが、主演俳優が生き生きとしておりそれが結果的に作品を支えている。

なにしろ彼にとっては、ヒットシリーズの後に、1発屋で終わるかアクション俳優としてキャリアを継続できるかの分水嶺というべき重要な作品。だからものすごいやる気が感じられる点がいい。頑張る若者の姿を見ると、素直に応援したくなる。だからこうしていい点をつけてやったりもする。ほら、おっさん客も役に立つだろう? テイラー君。



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