『新少林寺/SHAOLIN』65点(100点満点中)
Shaolin 2011年11月19日(土)よりTOHOシネマズ六本木ヒルズ他全国ロードショー!! 2010年/香港・中国/131分/カラー/シネマスコープ/ドルビーSRD/北京語/PG-12 提供:カルチュア・パブリッシャーズ 配給:ブロードメディア・スタジオ/カルチュア・パブリッシャーズ
監督・製作:ベニー・チャン アクション監督:コリー・ユン アクション指導:ニッキー・リー 出演:アンディ・ラウ ニコラス・ツェー ファン・ビンビン ジャッキー・チェン

≪ムーディーな少林寺映画≫

少林寺という単語は、30代くらいの人にはちょいと琴線に触れるものがある。今よりずっと香港映画が活況だったころ、見たこともないストリクトなカンフーの動きで彼らを魅了したのは、一連の少林寺ムービーであった。やっぱりガチなのは少林寺だよね、との認識が自然となされていたのも記憶に残る。

中国の山寺では、めっぽう強いやつらが修行をしている。そんな魅力的な想像をかきたてたカンフー映画の数々は、しかし本家本元の少林寺が作ったものではなかった。本当の少林寺とはどんなところなのか、そこで研鑽された武術体系とはどんなものか。それを知るためにも、やはりオフィシャルな少林寺映画が観たい。

そんな人のために『新少林寺/SHAOLIN』が登場した。史上初めて少林寺が公式に製作許可を出し、監修までした本作は、そこで修行をつむ僧侶たちの日常風景や思想信条、素朴だが誠実な、禅の精神のもとで生きる姿を堪能できる。

辛亥革命で清が倒れ、各地で戦乱が発生した時代。難民たちに救いの手を差し伸べたのは、少林寺とその僧侶たちであった。そこにやってきた将軍・侯杰(アンディ・ラウ)は、かつて彼らを愚弄した冷酷な男だったが、わけあって心を入れ替え、出家したいという。だが彼を受け入れた時から、少林寺は彼を狙う大軍を敵に回す運命となった。侯杰と僧侶たちは、寺と難民たちを守ることができるのだろうか。

主要な登場人物には、名前とともに肩書や説明が字幕にでるという親切設計。最近の香港・中国映画ではよくみられるアイデアだ。

アンディ・ラウを主演に、ニコラス・ツェー、ファン・ビンビンとアジアの人気者たちが顔をそろえる。99本目の出演作となるジャッキー・チェンも重要な役柄で顔をだし、数は少ないが年齢を超えた激しいアクションを見せてくれる。

とはいえこの映画では、元となった82年の「少林寺」ほどには武術をフィーチャーしておらず、むしろそれ以上に少林寺に生きる者の精神の部分を知ってほしいとの印象を受ける。かといってアクションに手抜きはなしで、終盤の戦いにおける自己犠牲の場面などはえらく盛り上がる。ほぼ実物大で建てられた古式建築の寺セットが、砲弾で崩壊してゆく場面の迫力は相当なものだし、かつ珍しい。

決して能天気に楽しめるアクション映画というわけではないが、初の少林寺謹製という点、この巨大セットをうまく使っているスペクタクルという2点で、大画面で見る価値はぎりぎりあると判断する。少林寺ファンは、上映期間をお見逃しなく。



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