『第7鉱区』65点(100点満点中)
Sector 7 2011年11月12日(土)新宿バルト9ほか全国順次ロードショー 2011年/韓国/カラー/101分/配給: CJ Entertainment Japan
監督:キム・ジフン 脚本:キム・フィ、ユン・ジェギュン 出演:ハ・ジウォン アン・ソンギ オ・ジホ
≪あまりに日本不在すぎて意外≫
『第7鉱区』は、韓国初の自国技術のみによるCGの見せ場や、3Dという目玉があったにもかかわらず、本国ではさほどヒットすることなく終わった悲運の作品。決して悪い出来ではないのだが、普通すぎて物足りないのは否めない。この題材を扱うならば、もっと「日本」を出さねば韓国映画らしくない。それさえやっておけば、もっともっとウケたに違いないのだが。
東シナ海に位置する第7鉱区。ここで海底資源調査を続けているボーリング船「エクリプス」には、男勝りのヘジュン(ハ・ジウォン)をはじめ、士気の高いスタッフが揃っていた。そんな折、船内でクルーが謎めいた死に方をするが、これは悲劇の始まりに過ぎなかった。
『第7鉱区』はジャンルバレ厳禁な映画だと思うので、当サイトではこれ以上のあらすじは明かさない。何も知らないままに見に行って驚いてもらったほうが良いと私は判断している。ちなみに予告編製作者はそのように考えなかった模様なので、盛大にネタバレしている。これからこの映画を見たい方は要注意のこと。
さて、映画の舞台となった「第7鉱区」とは一体なにか。これは九州のそばにある実在の海域のことで、かつてこの地で日韓は共同開発を行っていた。ところがその計画は途中で頓挫。映画の中で主人公たちが単身ここを掘り続けているのは、いまだにこの海域の可能性を信じているからというわけだ。
だが正直なところ、なぜ韓国人が九州の真横の海底を勝手に掘っているのか、今どきの日本人にはさっぱりわからないだろう。海上保安庁の船影はちらとも出てこないし、いったい彼らは誰の許可を得てそこを掘っているのか。野田総理大臣か?
そんな疑問を感じた人はきわめてまっとうな国際感覚の持ち主である。なにしろ先述した日韓共同開発が失敗した原因は、交渉中に韓国側が勝手に日本の海域を掘り始めたのが原因。そもそも「第7鉱区」などとわが物のごとく称してはいるが、実際は日本のEEZ以外のなにものでもない。
そこを舞台に能天気なアクション映画を作ってしまう。まさに、韓国映画ここにありというべき傍若無人な所業である。玄界灘で日韓が仲良く海底開発している「THE LAST MESSAGE 海猿」の友好お花畑な設定が、ほとほとマヌケに見えてくる。
ただ私が不満なのが、ここまでしながら、この映画には日本ネタが出てこない。とくに、殺害事件の真相は絶対日本絡みだと期待していたのにガッカリであった。韓国映画界よ、いったいどうしたのだ。もっと気概を見せてみよ。彼らのふがいなさに対し、ここに猛省を促しておく。
映画としては、大げさすぎる演出、無駄に熱くるしい友情パート、クズすぎる隊長などユニークな登場人物とそのやりとりに、いかにもコリアンセンスが感じられ大いに楽しめる。ややチープだがCGもそれなりに出来ているし、3Dも昔ながらの飛び出し志向で好感が持てる。
日本との貿易ではごっそり利益を持って行かれ、アメリカにはFTAでいじめられ、中国からは政治外交で圧倒されと、周辺国に食い漁らされてつらい状況にある韓国。彼らが、いかに本当の意味での自主独立に憧れているかも、この映画を見るとよくわかる。ラストシーンなどは、あまりにあからさますぎて痛々しさすら感じるが、こういう娯楽映画にこそ大衆の本音が表れると理解していれば、これほど興味深いものもない。