『セカンドバージン』45点(100点満点中)
2011/09/23より公開 2011年/日本/105分/松竹
監督:黒崎博 脚本:大石静 音楽:めいなCo. 出演:鈴木京香 長谷川博己 深田恭子 天野義久 ヌル・エルフィ・ロイ
こんなにもしっかりしているのに、映画としては足りていない
NHKにしてはちょっぴりセクシーだった話題のドラマの映画版『セカンドバージン』のあまりの無難な仕上がりを見て私は、日本の芸能界の相変わらずの志の低さに失望した。これだから日本の映画はダメなのだ。こんな生ぬるい出来ではまるで、邦画を見る人は高いお金を払ってがっかりしに行くようなものではないか。なおこの段落の文章について、鈴木京香の裸が見られなかったから書いているわけでは決してない事を最初に申し上げておく。
出版業界で名を知られたキャリアウーマンのるい(鈴木京香)は、かつて燃え上がるような不倫愛の相手だったが5年間も音信不通になっていたコウ(長谷川博己)をマレーシアで発見する。思わず追いかけたるいの目前で、コウはマフィアの銃弾に倒れる。外界と隔絶されたかのような森の中の病室で孤独な看病を続けるるいは、二人の出会いから回想をはじめる……。
ドラマの総集編というわけではないが、続編でもない。すでに本編ではコウとるいの運命は決しているが、二人の最後の数日間を改めて丁寧に描きなおした形の脚本である。よって、ドラマ未見の人はおことわり。かといって見ていれば無条件で楽しめるかというとそうでもない、なんとも地味なコンセプトである。
とはいえさすがはNHK、いい機材を使っているから映像の美しさは格別で、セット撮影の病室シーンから海外ロケの森や街並みまで、幻想的な物語空間を作り出している。至上の愛に包まれた二人以外、地上に誰もいない。そんな風にさえ感じさせるロマンティックなラブストーリーになっている。その意味では、映画的な出来は決して悪くはない。
だが、ちょっとした事情により鈴木京香や本妻役の深田恭子のお色気シーンはなし。ドラマ版はNHKの倫理規定に果敢にチャレンジした点が話題になったのに、そのリミッターがない映画版がそれよりも大人しいとは、なんたるていたらくであろう。
もっとも、監督はじめ映画版クルーに責任があるわけでない事は、風のうわさで聞いている。こういうことが起きるのは日本の芸能界ならではの構造的問題のようなもので、愚痴を言ったところでどうにもならない。事情を知らない観客も、日本映画や日本の女優には、世界の常識が通じない事を薄々感づいている。こんなことばかりやっていると、近いうちに彼らに本当に見放されて真の邦画不況が来ることは確実だが、今はまだそんなことをいう人はあまりいない。