『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』60点(100点満点中)
Transformers: Dark of the Moon 2011年7月29日(金) TOHOシネマズ日劇ほか全国超拡大ロードショー 2011年/アメリカ/カラー/2時間34分/配給:パラマウント
製作総指揮:スティーブン・スピルバーグ 監督:マイケル・ベイ 出演:シャイア・ラブーフ ロージー・ハンティントン・ホワイトレー ジョン・マルコビッチ ジョシユ・デュアメル

≪アイデア切れと3Dへの不慣れさ≫

米軍の全面協力を得て作られているこのシリーズは、ウォッチ対象としては抜群に面白い愛国ムービーだが、さすがに3作目ともなるとマンネリ感が強く、前作の残りダシで作った余りもの料理の印象が否めない。

命がけの冒険をしたわりには平凡な社会人生活を始めたサム(シャイア・ラブーフ)。オートボットたちは相変わらず米政府と手を組んで世界の平和を守っていたが、サムはそこに参加できない疎外感を感じていた。だが平和は束の間、かつてない激しい悪の侵略が始まり、その策略によって米軍とオートボットたちの絆もついにほころびが生じはじめた。

日銀砲がじつは豆鉄砲程度の威力しか持たないことがわかり、もはや誰もドル安を止められぬ事がわかりつつある今日この頃。このドル安状況で米国経済を上向かせるには、最大の輸出産業である軍需産業に公共事業大セールをプレゼントすべきと考える人は少なくない。

そういう状況下で、ハリウッドがタイミングよく異星人と人類が戦う映画を量産して、あたかも厭戦気分が蔓延する米国民世論の地ならしを始めているように見えるのは、興味深い事といえる。

トランスフォーマーシリーズはそうした「(広義の)エイリアン侵略もの」の中でも最大の話題作だが、この最新作は決して出来がいいとは言えない。

監督のマイケル・ベイは、アメリカのビッグバジェット映画の監督の中では珍しいことに、最近まで3Dには積極的ではなかった。2Dで充分、3Dにはまだ問題も多いという考え方で、これには私も共感するが、それでもこの新作では3Dに挑戦している。

そんな不慣れなところにもってきて、3作目特有のアイデア切れ。彼ほどの監督になれば、前作までの繰り返しは避けようとするのがプライドの見せ所だからやむを得ないが、米軍協力によるご自慢の軍事アクションの迫力は、前作のほうがずっと上である。

それでもCGの出来ばえはさすがで、軍隊の本物兵器、たとえば各種ヘリやオスプレイのような新型航空機と、CG製のトランスフォーマーが共存する画面の中でも、質感にさほどの違和感がないあたりは大したもの。戦うシーンでも、本物兵器よりたしかにトランスフォーマーの方が強そうに見える。合理的な設計による実在の兵器より、デザイン重視の空想上のロボットを強く見せるなんて、そう簡単にできるものではない。これは特筆に値する。

ストーリーは中盤の薄さが致命的。後半は盛り返し、最前線で戦うバンブルビーやオプティマスプライムに、思うように協力できない無力感、ふがいなさなど人間ドラマもそれなりに描けている。

私はこのシリーズをプロパガンダムービーと認識しているのでその面から評論すると、どんなに敵が強大でも決してひかない敢闘精神は、まさに海兵隊をはじめとする米軍のポリシーそのもの。米軍賛美のこうしたテーマを一般に広める役割は、十二分に果たしているといえる。ちなみにこれと同じテーマの映画がこの夏何本か公開される。今年の夏は、アメリカ発の軍事アクション映画に注目である。

スローモーションを多用した高速道路の追跡アクションなど、個別にいい場面はいくつかあるが、全体的な満足度はやや弱い。そんなパート3である。



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