『忍たま乱太郎』30点(100点満点中)
Ninja Kids!!! 2011年7月23日(土)、全国ロードショー 2011年/日本/カラー/100分/配給:ワーナー・ブラザース映画
原作:尼子騒兵衛「落第忍者乱太郎」 アニメーション「忍たま乱太郎」 監督:三池崇史 脚本:浦沢義雄 出演:加藤清史郎 林遼威 木村風太
≪キャスティングの苦労は買うが…≫
ハリー・ポッターが英国寄宿学校をモデルにしたファンタジーだとすれば、日本には忍者学校で頑張る子供忍者を描いた『忍たま乱太郎』がある。ハリポタ最終版にこちらもその映画化をぶつけてくるとは、じつに挑発的といえよう。しかもわざわざ実写版にするという暴挙、いや大胆さである。これは注目しないわけにはいかない。
貧しいが優しい父母のもとを離れ、忍者学校に通う乱太郎(加藤清史郎)。担任の先生方や同級生には愉快な人が勢ぞろい、乱太郎は退屈知らずな日々を過ごしていたが、ある日、カリスマ髪結いの斉藤幸隆(鹿賀丈史)が襲われる事件が起きる。それ以来、不穏な空気が町に蔓延、やがて忍たまたちも巻き込まれてゆく。
三池崇史監督の人徳というべきか、豪華すぎるキャストが勢ぞろい。平幹二朗や寺島進、柄本明や石橋蓮司、松方弘樹など、そうそうたるベテラン、演技派たちが、その演技力を無駄遣いしておくる確信的おバカ映画である。
やたらと凝ったセットで子供たちの追いかっこを撮影するなど、作り手の苦労の割にはしょぼいことこの上ない映像が魅力。大した効果もないのにそのシークエンスの長さときたら、冗長さと貧乏臭さを味わうには十分すぎるほど。大人たちは苦笑失笑、子供たちは、場合によってはそれなりに楽しんでくれるかもしれないという作品だ。
忍たまファンのわが子に連れて行かれたお父さんお母さんにとっては、前半は三池監督からの暗黙の父母向けサービスを受け取ることができる。ナンセンスなコントのごときギャグの数々はそれなりに楽しい。演じているのが普段はこわもてな役で人気の大俳優だったりするから、これは完全に大人向けの笑いである。
一方、冗長アクションが増える後半はもうお子様に任せて、大人は節電疲れを空調のきいたソファで癒す時間と割り切って座っているのがよろしい。
要するに、この映画はキャストのセッティングであらゆる労力を使いきったようなもので、それ以外、とくにシナリオのテキトーさ加減などは批評にも値しない。
そういうものだと割り切る、ある種の諦念が必要となる子供映画である。