『ムカデ人間』60点(100点満点中)
The Human Centipede (First Sequence)
2011年7月2日、シネクイント にて レイトロードショー!(全国順次) 2009/オランダ・イギリス合作/英語/90分/カラー/HD/ステレオ/R-15 配給:トランスフォーマー
監督・脚本:トム・シックス 出演:ディーター・ラーザー アシュリー・C・ウィリアムス アシュリン・イェニー 北村昭博
≪出し惜しみはやめろ≫
『ムカデ人間』は、あるマッドドクターが人間3人を直列に縫い合わせてムカデ状にしてしまうお話である。しかもそれは、一人目の尻の穴に次の人間の口をガッチリ縫い合わせる形で、一人目がご飯を食べるだけで3人が養えるという画期的なシステムである。
私などは、黒髪ロングのやせてる女の子とならいくらでもつながっていたい性格だが、それにしてもこのシステムはまずい。そもそもつながっていたい部位が当方の希望とはだいぶ異なっている。参加は辞退したい。
ドイツ郊外でレンタカーがパンクしたアメリカ人旅行客二人。車のことなどまったくわからない若いギャルである彼女たちは、森の中を民家を求めてさまよい、やがて外科医のヨーゼフ・ハイター博士(ディーター・ラーザー)が一人暮らす屋敷へとたどり着く。だが悪いことに、博士はちょうどムカデ人間研究の実験台を探していたところだった。
この映画の潔くないところは、最初から「カルト珍作として話題になってやろう」との色気丸出しなところ。
この映画の作り手は、はなっから続編を作って儲けようと計画しているので、この1作目は出し惜しみの塊である。「何でこの被害者たちはこうしないんだ」と、見ているとストレスがたまりまくる。歩けるのになぜアソコに移動しない? ヤクザのくせになぜ自由な上半身で反撃しない? 等々、細かい部分の居心地の悪さは相当なもの。
さらに、観客が見たいものはまるで見せない。接続部の詳細は? 排泄等々の詳細は? などなど、その不十分さ、生ぬるさは決して演出によるものではなかろう。この1作目では、過激な描写や展開はあえてセーブして、完全版と称する続編にひっぱろうというわけだ。ならば不完全版を見せられる側はどうすればいいのか。
B級エログロ好きマーケットに対し「こういうものを作ればお前ら簡単に釣れるだろ」というわけである。こうした本音が丸見えの作品でも絶賛されてしまうのだから、ファンは甘く見られたものである。
私がこの作り手に言いたいのは、もっと本気を見せろということだ。もっとお前たちにはアイデアがあったはずだろう? 斬新な描写もできるんだろう? それを全部ぶつけて来い。愛情を込めてそう言っておく。
さらには、「人と人がつながる」とは、このコミュニケーションレスな時代にマッチしたモチーフである。あのオチや展開には、そうしたテーマ性をこめる事も容易なはずだ。キャラクター設定など、ちょいと工夫すればそうした深みが加わる。
そのあたりも考慮して、続編にはたんなる悪ふざけで終わらない、本気のカルト作品を持ってきてほしい。