『オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー』70点(100点満点中)
2011年/日本/93分/東映 2011年4/1よりロードショー
監督:金田治 脚本:米村正二 特撮監督:佛田洋 出演:渡部秀、桜田通、三浦涼介、秋山莉奈 声の出演:藤岡弘、、佐々木剛、宮内洋
≪往年のライダーファンが子供と見る映画としてはほぼ満点≫
映画界にとって仮面ライダーは優良コンテンツで、頻繁に作られる劇場版はつねにそこそこの成績を記録する。言うまでもなくそれは、長い歴史というほかにはない強みを持っているからだ。じっさい親子二代で楽しめる特撮ものを楽しみにしている人は多いようで、当サイトにも批評を心待ちにするメールが時折届く。
そんな仮面ライダーは、最初の放映から40年。その記念すべき年に公開される一大企画がこの『オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー』だ。
デンライナーでやってきたNEW電王とオーズは、敵を追って1971年の日本へと向かう。やがて首尾よく敵を始末し現代に戻ってきた彼らは、そこがまったく元の世界と異なっていることに気付く。秘密結社ショッカーが日本を支配し、あの仮面ライダー1号、2号は悪のライダーとして君臨している。どうやら過去で行った何かが原因で、歴史が改変されてしまったのだ。味方のいない世界で、ライダーたちの孤独な戦いが始まる──。
タイムリープものには傑作が多いが、これも子供向けの範疇ながら見ごたえのあるシナリオである。しかも自然に過去ライダーたちの登場や活躍を組み入れられるオマケつき。……というより、それありきで練りこんだストーリーということだろう。
そんなわけで本作は、なんとこれまでのライダー全員が登場する。100パーセントオジサン仕様の映画だ。
クライマックスになると、イナゴのようにわらわらと往年のヒーローたちが登場。一人一人の登場シーンだけで延々何分間もかかり、全員そろうと人数が多すぎて横長の画面にすら入りきらない。右の人、もっと寄って、の集合記念写真状態である。こんなにも仮面ライダーがいたのかと、あきれるやら驚くやら。それぞれが必殺技を繰り出す姿には懐かしさのあまり感涙、東映のスーツ倉庫の管理人のおじさんにも大感謝といったところ。
しかも今回は、藤岡弘、、佐々木剛といったオリジナルキャストが声を当て、目いっぱい物語に絡んでくる。彼らのたのもし感ときたら異常レベルであり、弱きものの大ピンチを救うべく現れるそのタイミングなど、ほとんど神がかっている。
彼らが体現する確固たる正義、一片の迷いもないその堂々たる態度には、この混沌とした時代の暗い空気を吹き飛ばす通快感を感じられる。こういう思いが、オールドコンテンツならではの魅力だ。昨日今日出てきたイケメンライダーでは、さすがにここまでは難しい。
ライダー勢揃い以降は、作り手の悪乗り全開でギャグ映画状態だが、それもまたよし。もともとお祭りだし、古いライダーを知らない子供たちにも目いっぱい楽しんでもらわなくてはならない。この映画は十二分にその役を果たしてくれるし、父子の距離を縮めてくれるだろう。すばらしいことだ。