『毎日かあさん』45点(100点満点中)
2011年2月5日より全国ロードショー 2011年/日本/カラー/1時間54分/配給:松竹
原作:西原理恵子 脚本:真辺克彦 監督:小林聖太郎 出演:小泉今日子 永瀬正敏 矢部光祐
小西舞優 正司照枝
≪少子化対策によい映画≫
映画におけるキャスティングはもちろん重要で、ときにはそこから企画が始まることもある。ハリウッドなどでは出資者を説得するための、企画者にとっての最大の武器でもある。
泣けるギャグ漫画と評判の西原理恵子の代表作の実写化『毎日かあさん』は、そのキャスティング面において、群を抜く話題性を誇る作品といえる。
漫画家で二児の母でのあるサイバラリエコ(小泉今日子)は、6歳の息子や4歳の娘に振り回され、大忙しの毎日を送っている。戦場カメラマンの夫カモシダ(永瀬正敏)はアルコール依存症でろくに仕事もせず、さらに悩みを大きくさせる存在。しかも彼の病状は悪化の一途をたどっていた。
離婚する夫婦の役を、離婚した夫婦に演じさせるとは、ほとんどいやがらせのようなキャスティングである。二人がケンカ……というより妻が一方的に夫をののしりなじるシーンの迫力はすさまじいもので、まるで本気で恨みでもあるんじゃないかと思わせるリアリティを感じさせるが、むろんそれは小泉今日子の演技力のたまものに違いない。
苦しい日常を前向きな視点から観察し、心温まるエピソードとして漫画にした原作(とアニメ版)は、独特の絵柄とキレのいい笑いによって万人の共感を集めた。
それに比べてこの映画版の弱いところは、実写になると(さらにキャスティング上の特性のため)妙に生々しくて、心置きなく笑うことができない一点にある。割烹着の三頭身のかあちゃんが怒鳴るなら笑えても、キョンキョンが永瀬正敏をいじめる姿はどうにもいたたまれない。
もっともそれは作り手も理解しているようで、実写版は家族愛の尊さを謳いあげる、いわば笑いより感動面に重点を置いたつくり。こうなると二人の演技力も生きてくる。子役たちもほがらかで見ていて気持ちがよい。
ここで私が感じたのは、この映画は子育ての大変さとともにその幸福感を上手に描いているなということ。家事と育児の両立に悩む専業主婦から、主人公のようにSOHOなどで仕事もするお母さんまで、「毎日かあさん」をやっている女性たちの共感ポイントは多数あるはずだ。
どちらかといえば家庭外という名の戦場で、多方面作戦を展開するのが好きな私のような戦場カメラマンであっても、これを見るとかわいい子供が欲しくなる。
増税して集めた金を子ども手当でちょっぴりお返しする、悪徳クーポン企業顔負けの詐欺的な少子化対策より、この映画一本みるほうがよほど効果がある。与謝野馨・少子化対策担当大臣には、一刻も早い本作の鑑賞を、いち主権者として命じておきたい。